【目黒区】桜のない時期こそみんなの“ACTION”が力になる。目黒川の桜を未来へ繋いでいくために私たちができること

「中目黒桜まつり2025」の様子(2025年3月29日撮影)
2025年の春、桜の開花は平年並みでしたが、暖かい日と寒い日が極端に続く陽気でいつもよりも長く桜の花を楽しめたような気がします。今年も目黒川の桜を存分に堪能された、という方も多かったのではないでしょうか。
全国的にも有名な目黒川の桜ですが、キリンビール株式会社が取り組んでいる「晴れ風ACTION」の寄付先の1つに選定されたことをご存じでしたでしょうか。目黒区内には目黒川沿いを含め、約2,100本の桜の木が植えられています。

目黒区みどり土木政策課の鶴田直人さん
今回は、美しい桜が咲く風景を守り、未来へと継承していくために、日頃から保全に取り組んでいる目黒区みどり土木政策課の鶴田直人さんにインタビュー。桜の季節はもちろんのこと、桜のない時期こそ応援してもらいたい「晴れ風ACTION」についてもご紹介していきましょう。
目黒区みどり土木政策課とはどんな業務を担当している?
みどり土木政策課は、目黒区総合庁舎6階にある部署で、区内の緑化や公園、道路、河川の水質改善などに関する政策や計画、工事の調整などを行っています。
総合庁舎の屋上には庭園「目黒十五(とうご)庭」がありますが、こちらもみどり土木政策課の取り組みの1つ。東京農業大学と協定を締結し、屋上緑化の情報発信地として維持するだけではなく、研究・調査を続けています。
キリンビールが取り組む「晴れ風ACTION」とは?
「晴れ風ACTION」とは、キリンビール「晴れ風」の売上の一部を利用し、日本の風物詩(桜や花火など)の保全・継承を支援する活動。自治体の市町村レベルで寄付先を選定し、その取り組みを支援するというものです。
2024年の「晴れ風ACTION」では桜、花火それぞれに4,000万円ずつ、計8,000万円を寄付。そして、2025年は「晴れ風ACTION」第三弾として、桜の保全活動の寄付先を昨年から2倍の95自治体※に増やし、活動を広げていきます。

(画像提供:キリンビール株式会社)
※昨年は選定延期となっていた石川県2自治体についても含む
じつは日本の桜は今、深刻な危機に直面中。戦後の復興期に植えられた多くの桜が樹齢60~70年を迎え、全国で一斉に高齢化が進んでいるのだそうです。
伐採や植え替えなどの対策が必要にもかかわらず、人手や予算不足により、十分な管理ができずにいる自治体も多いのが実情。このままだと「桜のお花見」が、将来的には楽しめなくなる地域も増えてくることが予想されてます。
実際、四日市市の海蔵川沿いにある桜の木は老木となり、倒木・落枝の危険が高いと判断されたことから、毎年恒例だった「海蔵川(かいぞうがわ)桜まつり」が2025年は中止に。
キリンビールが「晴れ風ACTION」を通じて寄付を行う活動を始めたのも、「お花見」の主役として春にビールを飲むよろこびを広げてきてくれた桜を、ビールを通じて守っていくことが、“ビールからの恩返し”だと考えたからなのだそう。
目黒区の場合は目黒川の桜が選ばれています。

(画像提供:目黒区)
寄付は「晴れ風」の購入だけではなく、晴れ風コイン(0.5円相当)を使用して行うこともできます。「晴れ風ACTION」のサイト※に訪問すると、1日1回コインが無料で付与されるので、目黒区を選択して寄付をするをクリックすると完了します。
寄付金は弱っている桜の樹勢回復、基本剪定などの事業にかかる費用の一部として活用予定とのこと。
実施期間は2025年12月31日(水)までですので、1日1回の応援をぜひよろしくお願いします。
※満20歳以上の方が対象です。
目黒川の桜の歴史をちょこっと

目黒新橋付近の桜(2025年3月30日撮影)
今では約800本の桜が植えられ、都内屈指の桜の名所として有名になった目黒川ですが、最初に植えられたのは昭和の初め頃。目黒川改修工事が行われた際、地域の方々が両岸に桜を植えたことが始まりといわれています。
その後、護岸工事や植え替えなどを経て、3代目の桜並木となるそうです(参照元:目黒区ホームページ「MEGURO+」より)。南部橋の近くには、1936年(昭和11年)に旧西郷邸の所有者である西郷従道(しげみち・じゅうどう、西郷隆盛の弟)の息子・従徳(じゅうとく)をはじめとする有志の方々によって建てられた「桜樹記念碑」があります。
目黒川の美しい桜を守り、後世へと繋いでいくために欠かせない保全活動

目黒川ふれあい橋付近の桜並木(2025年3月30日撮影)
このところ目黒区内の各所で桜の剪定や伐採が行われ、「景観が損なわれた」「見ごたえがなくなった」という声も聞こえてきています。みどり土木政策課へもそういった区民の方の声が届いているようで…。
「桜の木はそのままにしておくと樹勢が衰えてしまうのです。風通しを良くし、まんべなく日が当たるようにしてあげないと、寿命を縮めてしまうことになりかねません。
私たちも断腸の思いで実施しておりますが、未来へ桜のある風景を残していくためには、剪定、伐採などの保護活動は必要なこととなります」と鶴田さん。
目黒川の桜並木も未来へと繋いでいくために、必要があって手を入れている、ということをより多くの方に知ってもらいたいと感じました。
桜の木とはどんな樹木?

(2025年3月30日撮影)
桜の木とはどのような性質を持つ樹木なのか簡単にご紹介しましょう。
- 日当たりを好む
- 根の張りが浅く、広く張るため、土が硬くなったり、根元周りにたくさんの土が被さると呼吸ができなくなり樹勢が低下する
- 腐朽しやすい
- 虫が付きやすい
このような性質を持つため、手入れは欠かせないものになっています。ちなみに今どこの自治体でも警戒を強めているのは、特定外来生物である「クビアカツヤカミキリ」。

クビアカツヤカミキリ(画像提供:目黒区)
この害虫はサクラなどのバラ科樹木に寄生し、幼虫が樹の内部を食べて枯らしてしまうそうです(目黒区ではまだ発見されていない)。万が一発見した場合は、その場で捕殺(踏みつぶす等)し、目黒区都市整備部みどり土木政策課施設計画係へ連絡してほしいとのことでした。
桜の基本剪定や樹勢回復に取り組み中
2023年(令和5年)度から3年間かけて、目黒川沿いの樹勢の悪い桜を対象に枝葉を大きく剪定し、樹木の形を整える基本剪定を実施中です。

(画像提供:目黒区)
目黒川沿いの桜は他のエリアに比べ樹勢が悪いため、基本剪定に加えて樹勢回復(硬くなった土壌を改善)を順次実施しています。
樹木診断により倒木の危険があると判断された桜については、安全確保のために伐採。切り株のまましばらく置いておくことで抜根しやすくなるため、1~2年そのままにしておくそうです。

桜の伐採・植え替えの様子(画像提供:目黒区)
桜の木が伐採されたままになっていたのは、そういった理由だったんですね。伐採された桜は、サクラ再生実行計画に基づき、植替えを行っていくそうなのでご安心ください。
毎年、きれいに咲いていた桜が伐採されて残念に思う気持ちは皆同じ。私たちの子どもや孫、ひ孫の世代へと桜の命を繋いでいくために必要な作業として見守っていきたいと思いました。
保全活動のために「目黒のサクラ基金」を設立
実は1本の桜を植え替えるためには、伐採・伐根・新植などに約100万円かかるのだそう。目黒区内には約2,100本の桜がありますから、全部をメンテナンスするとなると大変な費用になるというわけですね。
そこで2014年(平成26年)3月に「目黒のサクラ基金」を設立。目黒のサクラ保全事業や桜守活動への支援を行っています。
目黒のサクラ保全事業では樹木医による診断を行い、桜の状態をチェック。倒木の恐れがある場合は、先行して伐採し、安全確保を進めています。
保護・植え替えについては、地域の方々と検討を行い、策定したサクラ再生実行計画により、保護・植え替えを進めているとのこと。
桜守活動とは地域の方で地域の桜を守るボランティア活動です。清掃活動や桜の継続的な観察、保全活動などをサポートしていらっしゃいます。
伐採された桜の木は「目黒のサクラ基金」の記念品に

(画像提供:目黒区)
地元の方々からも愛着が深い、目黒川の桜。老朽化し伐採された桜の幹等を活用し、桜の花をモチーフとした「サクラストラップ」を制作。目黒のサクラ基金に1万円以上の寄付をしていただいた個人・法人・グループに1個贈呈しています。
寄付はみどり土木政策課の窓口でも可能ですし、郵便局からの振込もOK。ふるさと納税ポータルサイト(ふるさとチョイス・東急ふるさとパレット・楽天ふるさと納税)からの寄付も可能ですので、各ポータルサイトを確認ください。
スマホで簡単、桜の健康診断が可能な「桜AIカメラ」を活用しよう

(画像提供:キリンビール株式会社)
目黒川を始め、目黒区内にある桜の保全活動には地元の皆さんの応援が欠かせません。先ほどご紹介した「晴れ風ACTION」からの寄付もそうですが、日常生活で気軽にできる保全活動があります。
それは、キリンビールが開発し、2025年3月17日(月)からリリースした「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」の活用です。スマホカメラによるAI判定で桜の健康状態と推定樹齢を測定し、ユーザーや自治体に開示されるデータベースになるサービス。
スマホ専用サイトからアクセスし、お散歩やお買い物、通勤・通学のついでにお近くの桜の木をスマホでパシャリと撮影。
独自に開発したAI技術で桜の健康状態や樹齢を判定。桜の写真と健康状態や樹齢のデータが、位置情報とともにデータベース上に集積されます。
自治体専用ページを通じて、集まった写真やデータは、桜保全の担当者や樹木医の方々に閲覧・活用されるという仕組み。

(画像提供:キリンビール株式会社)
桜が咲いている季節は皆さん、たくさん撮影してくださっているのですが、その時期を過ぎるとなかなか撮影データが集まらないそうです。
新緑や紅葉の季節、枝だけになる冬の季節もぜひ撮影していただければ嬉しいと鶴田さん。

新緑も紅葉も美しい目黒川の桜
目黒区内にあるたくさんの桜の木全てを、職員の方だけでこまめにチェックするのは大変な作業です。この「桜AIカメラ」で集められたデータを活用できれば、桜の保全・再生活動に大きな後押しになることは間違いなし。
桜の時期が終わってしまった今だからこそ、積極的に桜の木を撮影して、目黒川の、目黒区内のきれいな桜を未来へとつなげていきましょう。
目黒川の桜を守るためにできる私たちのACTION
- キリンビールの「晴れ風」をおいしくいただく
- 「晴れ風ACTION」のサイトに1日1回アクセスし、目黒区に寄付をするをクリック
- 目黒のサクラ基金に協力する
- 「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」でこまめに桜の木を撮影する
どれか1つでもいいので、ぜひご協力ください。
みどり土木政策課の鶴田さんに教えていただきました、目黒区内の穴場お花見スポット!
目黒区といえば目黒川の桜が注目されがちですが、その他にもお花見の名所はたくさん。私も毎年、呑川沿いや立会川沿いの桜が咲くのを楽しみにしている1人です。
目黒区内の桜の場所を熟知されている鶴田さんにおススメの桜の名所をお聞きしたところ「駒場公園の桜」がイチオシなのだそうです。

駒場公園の桜(画像はイメージです)
駒場公園には何度かおじゃましたことがありますが、桜の季節には足を運んだことはなかったかも。駒場公園は東大駒場キャンパスのすぐお隣にあり、公園内には「日本近代文学館」や「旧前田家本邸(和館・洋館)」もあります。
お花見にぴったりな場所は「芝生広場」。この広場を取り囲むようにソメイヨシノが植えられており、迫力満点の景色が楽しめますよ。
今年は見逃してしまいましたが、ぜひ来年は足を運んでみたいと思いました。
■取材協力