【目黒区】「目黒観光講座」後編!目黒川につながる人工の水路、三田用水跡を訪ねて
一般社団法人めぐろ観光まちづくり協会が会員向けに催行した「目黒観光講座」に参加。前編では、東京大学駒場キャンパス内の建物探訪とキャンパスの歴史についてご紹介しました。
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後編では、めぐろまち歩きボランティアガイドとともに三田用水の痕跡をたどるツアーに出発。その後、東大駒場先端技術研究所内にあるオーガニックレストラン「ape cucina naturale by ciaobella(以下、アーペ クッチーナ ナチュラーレ)」にて会員の皆さんとのランチを楽しんできました。
主に農業用水として使われてきた三田用水ですが、その後どのような役割を果たしたのかについても探ってみたいと思います。
玉川上水から飲料用として分水された「三田用水」
「三田用水」はもともと、1664年(寛文4年)に飲料用として玉川上水から分水した「三田上水」が始まり。白金御殿と呼ばれた松平讃岐守下屋敷(現在の自然教育園辺り)も使用したといわれ、この水を灌漑用水として農民の利用も許可されていたそうです(参照元:目黒区ホームページ)。
しかし1722年(享保7年)に三田上水が廃止。困った農民が関東郡代・伊奈半左衛門に嘆願。1724年(享保9年)に三田上水を農業用水として再使用することを許され、水路幅約1間(約1.818m)の「三田用水」が作られたそうです。
三田用水は上目黒、中目黒、下目黒、三田の4ヶ所の田んぼを潤し、1974年(昭和49年)に廃止されるまで約300年区内を流れ、目黒地域開発に役立ちました。
東京大学駒場キャンパス脇、山手通りに沿って残されている「三田用水」の遺構
上写真の青い矢印部分が三田用水の遺構です。現在は暗渠となっており、その姿を直接見ることはできません。
道路よりも高い位置に用水路が設けられているのは、水の流れを確保するためだそうです。
中を点検できるようにフタが設けられていました。
山手通り沿いにそって三田用水の痕跡が続きます。かつて置かれていた水路の細長い幅に合わせてビルなどが建てられているようです(フェンスの奥は東京大学の敷地)。
三田用水の暗渠化が始まったのは1929年頃から。その上流用水路の整備費用・暗渠化の工事費用を負担したのが恵比寿にあった「日本麦酒」、つまり現在のサッポロビールです(参照元:サッポロビール株式会社ホームページより)。
暗渠化は水質の維持のためで、単純にフタをするのではなく、内径80㎝ぐらいの土管を埋込んで流すという方式が取られたそうです。三田用水は当初、ビールの仕込み水として使われていたそうですが、その後、瓶の洗浄や冷却水として1974年(昭和48年)まで使用したとのことでした。
農業用水から水車を使った「精米・製粉・工業用動力源」にもなった「三田用水」
三田用水は時代と共にその用途を変えていきます。農業用水から水力を使った動力源、さらに海軍火薬工場の動力として活用された時代も。
池尻大橋に近い目黒川沿いに水車跡が残っているのをご存じでしょうか。
大橋1丁目付近は三田用水、目黒川の水力に恵まれていたため、江戸時代から明治にかけて多くの水車が作られたそうです。中でもこの近くにあった大橋の加藤水車は有名。
精米・製粉・雑穀加工・薬種の精製・ガラス磨き・タバコの刻みなど水車動力を利用した小さな工場ができたほど。現在ではすべて失われてしまいました。
また三田用水は邸宅内の庭園と引水する例もあったそうで、西郷隆盛の弟、西郷従道(じゅうどう)が建てた邸宅の滝や池、澁澤邸(現在の八芳園)などの屋敷に使われていました。西郷山公園は西郷従道の邸宅、北東部分に当たる敷地に造られたものです。
この後、三田用水の痕跡をたどりながら渋谷区の住宅地の中をぐるりと散策。往年の姿を探索しました。
再び東京大学駒場キャンパスに戻り、東大駒場先端技術研究所内へ
三田用水の散策を終えて、再び東京大学駒場キャンパスへ。「東大駒場先端技術研究所(以下、先端研)」側から入ります。東京大学で最も新しい付属研究所で1987年に設立。
文系と理系の垣根を越えた領域横断の研究活動を行っています。 敷地内には国の登録有形文化財に指定されている13号館(旧・東京帝国大学 航空研究所本館)」や彫刻家・吉田三郎氏により造られた人物像、航空研究所時代のマンホールなどの史跡をガイドしていただきました。
中でも1号館は航空機に影響を与える気流を測定する木製の風洞(通称:3m風洞、1930年実験開始)があるとか。長距離飛行世界記録を作った航研長距離機や国産旅客機YS-11等の設計に関わった、日本の航空史を語る上で極めて重要な風洞なのだそうです(参照元:東京大学 先端科学技術研究センターホームページより)。
この先端研は一般の方でも見学できるそうです。年に1回、6月頃に開催されているようなので興味のある方はぜひ!
「東大駒場先端技術研究所」内にある「アーペ クッチーナ ナチュラーレ」へ
キャンパス探訪ツアー、三田用水のまち歩きを終え、会員の皆様と一緒に先端研内にあるオーガニックレストラン「アーペ クッチーナ ナチュラーレ」へ。
「ape(アーぺ)」とはイタリア語でミツバチのこと。自然に育てられた食材や調味料を使って「素材を活かすように丁寧に作り上げた料理」を提供するレストランです。
以前は西麻布にあったレストランですが、2016年に先端研内に移転しました。ガラス張りで開放感のある店内には、温もりのある木を多用したインテリアでまとめられ、落ち着ける空間に。
こちらでイタリア料理のランチコースをいただきました。
心と体に優しい「アーペ クッチーナ ナチュラーレ」のイタリアンランチコース
サスティナブルな食材を使用し、生産者と共に自然との共生と環境保護に寄与。身体と心にも優しいお料理を提供するのがコンセプトの「アーペ クッチーナ ナチュラーレ」。
時には生産者の元へ足を運び、現地で育てられている野菜の様子などを見学することもあるそうです。
今回のランチコース、スタートに柚子ジュースをいただきました。
まち歩きをして喉が渇いていたので体に染みわたります。続いてアンティパスト(前菜)3種。
写真奥が「千葉県産鰯のエスカベッシュ(マリネ)」、手前向かって左が「ハーブ豚本来の自家製プロシュット・コット(イタリア製ボイルハム)」、右がフルムダンベールチーズムースのブルスケッタ」です。
フルムダンベールチーズは青カビタイプのチーズですが、クセがなく優しい味わいでした。
パンは自家製天然酵母と有機小麦粉を使った自家製のもの。噛むほどにうま味と味わいがあり、あっという間に完食です。
続いてプリモピアット(イタリアコース料理の第一の皿)。宮城産ヒイカと静岡県産サクラエビ、佐藤自然農園のブロッコリーのソース、ジロロモーニのオーガニックスパゲットーニ。
少し太めのパスタで魚介のうま味をたっぷりとまとわせた美味しい一皿でした。
最後にドルチェ(デザート)とコーヒーをいただきながら会員の皆さんと楽しいおしゃべり。
写真向かって左は小豆島homemekersのレモンと平飼卵、ノースブレインファームの発酵バターのパウンドケーキ。右手前はオーガニックブルーベリー、ノースブレインファームの牛乳ジェラートです。
どのお料理もやさしい味付けで素材の良さがしみじみと感じられるおいしさでした。
「アーペ クッチーナ ナチュラーレ」はランチ、ディナー共に要予約です。栄養士の資格もお持ちのシェフが食事制限をされている方向けにオリジナルメニューも対応してくださるそうです。
セミナーなども開催されているようなので、興味のある方はぜひ問合せてみてはいかがでしょうか。
今回、一般社団法人めぐろ観光まちづくり協会が会員向けに開催した「目黒観光講座」に参加してみて、いままで知らなかった目黒区の魅力をたくさん発見することができました。
また、会員同士の交流の場としてランチをいただき、「会員友」もできて嬉しかったです。いろいろな情報交換をしながら、皆さんに目黒区のおもしろいスポットや魅力的な施設などをどんどんご紹介できたら嬉しいです。
まち歩きはどなたでも参加できますし、目黒観光講座は一般社団法人めぐろ観光まちづくり協会の会員になると参加できます。さまざまな会員特典もありますので、ぜひ入会してみてはいかがですか?
■取材協力
↓「ape cucina naturale by ciaobella(アーペ クッチーナ ナチュラーレ)」は「東京大学駒場リサーチキャンパス生研AN棟1階」にあります。