【目黒区】自由が丘駅近くにある「名もない蒸留所」、自社が所有するミズナラ樽・サクラ樽熟成のシングルモルトウイスキーを量り売りするユニークなお店
自由が丘駅から徒歩約2分のところにあるサンリキビル。その1階に2023年8月8日(金)にオープンした「名もない蒸留所」は、北海道産のミズナラ樽で熟成したウイスキーを量り売りするお店です。
扉一つ分程度の間口で奥行きもほとんどないという大変小さなお店。お隣はいちご大福で人気の「あか 自由が丘店」です。
現在、ジャパニーズ ウイスキーは国内外から大人気で、原酒不足という事態に。長期間の熟成が必要なため、大量生産が難しいという事情もあります。
そんな中、熟成期間の短いノンエイジのウイスキーが製造され話題になるなど、新しいウイスキーの楽しみ方や魅力が注目されつつあります。
「名もない蒸留所」は熟成していく過程のウイスキーの味が楽しめるお店。国内ではほとんど見かけないミニ樽熟成ウイスキーなどを欲しい分だけ量り売りしてくれる、ちょっとユニークなスタイルとなっています。
「Makuake(マクアケ)」で注目を集めた「名もない蒸留所」
「名もない蒸留所」は「Makuake(マクアケ)」で、ミズナラ樽熟成「ジャパニーズ ウイスキー」の応援購入をスタート。第1弾は「カスクストレングス」「シングルカスク」のシングルモルトウイスキーでした。
「カスクストレングス」とは、樽から取り出された原酒のまま瓶詰されたウイスキー。「シングルカスク」とは、単一の樽で熟成されたウイスキーのことです。
最初のプロジェクト公開時(2023年2月)は、まだジャパニーズ ウイスキーと名乗れない熟成期間3年未満のものでしたが、わずか4日間で完売するのなど大反響。その後、第5弾まで「Makuake(マクアケ)」で先行販売し、いずれも目標額を達成しています。
ちなみにお店の方にうかがったところ、「ジャパニーズ ウイスキー」を名乗るためには、以下のような条件があるそうです。
- 日本国内の蒸留所で原材料を糖化・発酵・蒸留
- 国内で採取された水を使用
- 原酒を700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵する
- 日本国内で瓶詰めする
なぜお店の名前が「名もない蒸留所」なのか?
ウイスキーの世界では、どこで蒸留されたものなのか、その歴史や物語が大切だといわれています。ウイスキー販売事業者である「名もない蒸留所」は、製造蒸留所と海外出資者との契約的な事情で、蒸留所名を公開することができません。
国内で蒸留されたモルト原酒(ニューポット)を使い、製造蒸留所の名前を名乗らずにどう販売していくのか。考え抜いた結果、ありのままを表現する「名もない蒸留所」という名前でビジネスをスタートさせたというわけです。
「名もない蒸留所」の本業は物流企業(株式会社グローバル・ロジスティック・トレーディング)ですが、約10年前に酒類販売免許を取得。現在は酒類「加工者」として樽出しウイスキーを販売されています。
「加工」と聞くと何か手を加えているかのようなイメージがしますが、国内酒税法では加水して度数を下げる以外に何も手を加えてはいけないと定義。原材料の異なるウイスキー(グレーン)など違う種類の原酒を混ぜたり、洋酒の性質を変えてはいけないことになっています。
「名もない蒸留所」は蒸留者ではありませんが、国内蒸留所から分けてもらった上質なモルト原酒(ニューポッド)を自社が所有するミズナラ樽・サクラ樽で熟成した美味しいウイスキー原酒を提供。
「熟成過程の変化の違い」を楽しめる、ウイスキー量り売りのお店、と覚えておいてくださいね。
欧米の方々に「ジャパニーズ ウイスキー」が人気の理由は?日本独自のミズナラやサクラなどを使った樽にヒミツがあるのかも
熟成の道
少しずつ春の陽気があちらにもこちらにも届いている様子が伺えます。先日、弊社樽が保管されている蒸留所へ赴き、ますますウイスキーが熟成してきていて、シングルカスクウイスキーがとても楽しみになってきました。#NamelessDistillery#国産ミズナラ樽MIZUNARA #ウイスキーWHISKY pic.twitter.com/3lWDdJc48W
— Nameless Distillery 名もない蒸留所 (@WAKATARU1) March 9, 2023
「名もない蒸留所」では、欧州にあるパートナー企業に「なぜ日本のウイスキーがウイスキーの本場である欧米の方々に愛されるのか」たずねたそうです。
その時、彼らの推測ではありますが「日本の水は軟水であること、日本独自のミズナラやサクラなどを素材にした樽を使っていることに旨さが潜んでいるのではないか」という回答を得ました。
ミズナラは導管(どうかん)の数が、オーク材よりたくさんあり水分を多く含んでいる木。日本特有の風土に沿った性質で出来ていることから、ミズナラ特有の果実味に加えモルトの豊かな風味を楽しめるウイスキーになるのではと挑戦してみることに。
しかし、一般的なウイスキー樽に使用されるオーク材に比べ、値段も高価なミズナラ・サクラ材は取り扱いが難しい上、大量生産できない希少性が高いものです。
7月18日の海の日、ウイスキー「名もない蒸留所」あひるのお話がスタートします pic.twitter.com/QMWJf683Ic
— Nameless Distillery 名もない蒸留所 (@WAKATARU1) July 16, 2022
実際にお店でウイスキー販売にこぎつけるまで、大変な困難が待ち受けていたとのこと。そのストーリーは、ラベルに描かれたあひるを主人公にして描いた物語(公式X・旧Twitterもしくは公式サイト)で詳しく紹介されていますのでぜひご一読くださいね。
「名もない蒸留所」が販売する至極のウイスキー
ミズナラ樽は、国内のウイスキー樽製造職人さんの中でも素材の性質を把握した熟練の人しか扱えない素材なのだそうです。しかも国内製造用ウイスキーの樽に使うミズナラ材は、3~5年もの乾燥が必要。
「名もない蒸留所」では九州の洋酒樽職人が精魂込めて北海道産ミズナラ材だけで作った樽、九州産サクラ材だけで作ったサクラ樽を作成。それぞれの樽で熟成させたウイスキーを提供しています。
同じミズナラ樽熟成・サクラ樽熟成でも微妙な期間と樽の違いで味が少しずつ異なるそうです。
2023年11月に取材した際は、サクラ樽で熟成したラム酒(3年熟成)も販売中でした。また、店頭では450リットルのミズナラ樽で熟成したウイスキー、4リットルのミズナラミニ樽で熟成したウイスキーを量り売り中。
無料で試飲もさせてくれます。
小さな4リットルのミズナラミニ樽は、チャーリングが濃い(樽の内側を火で焦がす)ため、熟成期間は短いのにビンテージを超えるかのようなウイスキーの出来上がり。原酒のままで量り売りするため、アルコール度数は59%です。
「名もない蒸留所」では4種類の大きさの瓶を用意し、好きな分だけウイスキーを購入可能
量り売りするウイスキーはお店で用意してくれている150ml・200ml・375ml・500ml、4サイズの瓶に詰めてもらい、購入することが可能。
ギフト用の化粧箱も用意されているので、年末年始の贈り物にも喜ばれますね。
また、飲み終わった空き瓶を持参して中身だけ購入する場合は、定価の200円引きで購入できるとのこと。
飲み終わった瓶は捨てずに保管し、次のお買い物で活用してくださいね。私もお店で試飲させていただき、450リットル樽で熟成させたものと、4リットルミニ樽で熟成させたもの、それぞれ150mlずつ購入してみました!
上写真向かって左が450リットルミズナラ樽熟成、右が4リットルミニ樽熟成のもの。どちらも香りや味わいが異なり、飲み比べてみると面白かったです。
ボトルやラベルも可愛らしく、このまま飾っておきたいデザインです。
ウイスキーが大好きな方、興味がある方、ぜひお気軽に「名もない蒸留所」を訪問してみてはいかがでしょうか。
■取材協力
↓「名もない蒸留所」の場所はこちらになります。