【目黒区】福島県葛尾村で陸上養殖した生エビは甘くてとろけるようなおいしさ!「サカナバッカ中目黒」での先行お披露目会を取材しました
「サカナバッカ(sakana bacca)」は飲食店向けの生鮮品EC「魚ポチ(うおぽち)」をメインに展開している株式会社フーディソンが運営する街の魚屋さん。目黒区内には中目黒と都立大学にて2店舗がある他、中延、五反田、エキュート品川店、新橋、グランスタ東京店、グランスタ丸の内店と8店舗を展開中です。
フーディソンでは、2019年10月より福島県から事業を受託し、福島県の魚を販売する「ふくしま常磐(じょうばん)ものフェア」を開催。フェア期間外も継続的に福島県で水揚げされた鮮魚を仕入れ、販売しています。
また、2021年からは東京電力ホールディングス株式会社と連携し、福島県の水産品に対する風評を払拭するべく、「発見!ふくしまフェア」開催をスタート。2024年6月で10回目の開催となっているそうです。
今回の「発見!ふくしまフェア」では、福島県葛尾村(かつらおむら)で陸上養殖した生エビ(バナメイエビ)を先行販売。
エビの養殖を手掛けている株式会社HANERU葛尾 代表取締役社長・松延紀至(まつのぶ のりゆき)さんにもお会いできたので、さっそくご紹介していきましょう。
福島県沖の沿岸漁業・水揚げ量はまだ震災前の2.5割程度と低迷
福島県沖でとれる魚は「常磐(じょうばん)もの」と呼ばれ、親潮(冷たい海流)と黒潮(暖かい海流)がぶつかり合う豊かな漁場として知られています。黒潮に乗って北上してきた魚たちは、親潮で発生したプランクトンを食べて大きく育ちます。
福島の港では1年を通してたくさんのおいしい魚が水揚げされており、震災前には国内でも有数の出荷量を誇ってきました。
しかし、2021年3月に起きた東日本大震災及び東京電力福島第一原発事故によって、大打撃を負うことに。風評や担い手不足等によりいまだ震災前の水揚げ量に戻っていません。
また、ALPS処理水を海洋放出されたことにより、一層の風評対策が求められています。福島県沖で水揚げされた魚は放射性物質検査を魚種ごとにチェックされてから出荷。
また、海水中のトリチウムも環境省で定期的にモニタリングされており、自然界に存在するトリチウムよりもはるかに少ないレベルです。安全性が確認されている上で流通している福島のお魚は、むしろ安心して食卓に並べられるといえますね。
「サカナバッカ」では福島県の水産物や新しい特産品の販売促進を積極的に展開。フェア以外にも、福島県の水産振興による地域活性化を応援しています。
実際に私も「ふくしま海山丼」を購入し、食べましたが口の中でとろけるようなエビのうま味と甘味。プリプリの歯ごたえがたまらないヒラメにびっくりしました。
また、酢飯には赤酢を使うなど、細かいところまでこだわりがあり、ビジュアルも美しくすっかり堪能させていただきました!
福島県葛尾村とは?簡単にご紹介
葛尾村とは「相双(そうそう)」地区と呼ばれる福島県の浜通り、双葉郡にあります。海岸沿いにある浪江町から“三春の滝桜”でおなじみの三春町のちょうど中間ぐらい。
人口1304人・490世帯(2023年3月現在)ののどかな農山村(引用元:葛尾村ホームページより)です。原発事故の際、風向きの関係で放射能が村を襲い、全村避難を余儀なくされました。
その後、全地区の避難指示が解除されたのはなんと2022年6月のこと。まさに葛尾村では復興が始まったばかりといっても過言ではありません。
避難指示が解除された後に帰還した住民はわずか326人ほど。村に帰ってきても働く場所がなければ生活はできません。
株式会社HANERU葛尾の代表取締役社長・松延紀至(まつのぶ のりゆき)さんが葛尾村を訪問したのは、全村避難指示が解除される前年の2021年3月のことだったそうです。
のどかな山村でエビを育てる!株式会社HANERU葛尾の挑戦
松延社長は、上下水の大手コンサルタント会社に勤めていた際、「水産業で被災地の復興支援はできないか」と候補地を探していた時に葛尾村に出会ったそうです。
東日本大震災から11年を経ても今なお復興途中だった葛尾村の現状に驚かれたとか。美しい自然や山々に囲まれた葛尾村に出会い、「私の得意な上下水道事業のノウハウを活かして、村の復興に貢献したい。」と強く想ったと松延社長。
寒冷な山間地域で、陸上養殖の事業化が成功できれば、全国の過疎地における新産業創出と雇用の創出につながることにもなります。
そこで、葛尾村でバナメイエビの大規模陸上養殖事業を2022年からスタートさせ、さまざまな苦難を乗り越えつつ、安定して出荷できるところまでこぎつけた、というわけです。
なぜバナメイエビの養殖?出荷までの日数が少なく、国産が少ない
クルマエビ科の一種である「バナメイエビ」。身が柔らかく甘みが強いのが特徴です。
病気への耐性も強く、淡水に近い水質でも育ち、水中を泳ぐように生活します。養殖期間は3~4ヶ月で面積当たりの養殖量もある程度確保できるとのこと。
一方、スーパーなどでもよく見かける「ブラックタイガー」は、水底を這うように生活するため、面積当たりの養殖量に限界があること、養殖期間が約半年かかるのが難点。
このため、世界的に「バナメイエビ」の養殖業者は増えており、天候などに左右されず、年間を通じて安定供給が見込めることから「バナメイエビ」を選択したそうです。
食料自給率アップと地元との競合を避けられる
現在、「バナメイエビ」は国内で消費されている分の9割以上が輸入品で、食料自給率アップと国内の安全・安心な食材としてニーズが高いと判断した松延社長。
また、福島県で「バナメイエビ」の漁獲高はほぼ皆無であり、地元漁業関係者との競合も少ないということも選択した理由の一つでした。
海のない葛尾村で海水をつくるのは大変なチャレンジ
「バナメイエビ」は淡水に近い水質でも育つとはいえ、養殖には海水が欠かせません。当初は人工海水調整に失敗し、何度もエビの稚魚を全滅させるなど苦労を重ねてきました。
約1年がかりでエビの養殖を成功させ、出荷にこぎつけたという松延社長。2024年に国内最大級の陸上「エビ養殖場」を完成させて全国へおいしいエビを届けていく準備がまさに整ったばかり、というわけです。
魚の本当のおいしさを実感できる「サカナバッカ」
街中から姿を消しつつあるお魚屋さん。大手スーパーマーケットでは店内で対面調理も行うコーナーなどが復活し、捌きたて、おろしたてのお魚を楽しむことができるところも増えつつあります。
皆さん、新鮮な魚が食べたい、と思っていらっしゃるということですね。
「サカナバッカ」は獲れたての旬のお魚を販売する昔ながらのお魚屋さんであり、下処理はもちろん、おいしい食べ方なども伝授してくれます。ちょっとおしゃれな店構えが今風ですが、提供しているサービスはまさに昔ながらの「町のお魚屋さん」。
1~2人暮らしにぴったりな切り身やお刺身の盛り合わせなどもあるので、便利ですよ。
また定期的に開催している「まぐろの解体・即売会」では、普段はめったに食べられない目玉やカマなどの希少部位も購入できるかも!?
東京ではあまり流通していない魚種や高鮮度の鮮魚に出会える「サカナバッカ」。ぜひ足を運んでみてくださいね。
■取材協力
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