【目黒区】どうなる?目黒区美術館・区民センターをふくめた大規模再開発の行方
現在、目黒区で進行中の大規模再開発でもっとも注目を集めているのが目黒区美術館を含めた「新たな区民センターの基本計画」なのではないでしょうか。
目黒区では、築年数がかさみ、建物の老朽化や使いにくさが進む区民センター(1974年開館)の建て替えを検討。2017年(平成29年)に「区有施設見直し計画」を策定しました。
「目黒区民センター見直し検討」を区有施設見直しのリーディングプロジェクトに位置付け、2018年(平成30年)度から検討をスタート。
2023年(令和5年)6月に新たな目黒区民センターの基本計画(素案)を作成、パブリックコメントを実施し、説明会や有識者を交えたシンポジウムを開催しました。
その結果、一部の区民から再開発の内容に疑問が投げかけられ、特に目黒区美術館の取り壊しに対し、大きな反対運動が起こっています。
目黒区「新たな区民センターの基本計画」とはどんなもの?
目黒区民センターはJR目黒駅から徒歩約分。目黒川沿いにあり、「目黒区民まつり」「目黒商工祭り」など、さまざまなイベントの舞台にもなっています。
【目黒区】「第61回目黒区商工まつり(目黒リバーサイドフェスティバル)」は11月9日(土)・10日(日)で開催、あの都市ボーイズもやってくる!
区民センターがあるエリアには、目黒区美術館、公園、下目黒小学校があり、今回の再開発でこれらの施設・敷地を含めた大規模な計画。建て替え後は下目黒住区センター、男女平等・共同参画センター、青少年プラザと複合化・高層化した施設に建て替え、民間事業者への事業委託を行って再整備するという計画です。
🔔めぐろかがやきプロジェクトNEWS
新たな #目黒区民センター 等整備・運営事業は、民間事業者の資金やノウハウを活用した #PFI方式 で実施します📝
区が直接整備・運営する方式と比べ、質の高いサービスをより財政負担を少なく提供でき、安定した施設運営が期待できます✨https://t.co/DEMxlzkHSJ pic.twitter.com/ahocEIfdpw— 目黒区広報課 (@meguro_city) June 20, 2024
また目黒区民センターの建て替えに合わせて下目黒小学校を2029年(令和11年)4月からめぐろ学校サポートセンター(旧第二中学校)へ仮移転が予定されています。
目黒区民センター大規模再開発の目的・狙いとは?
現在の区民センターでは活動ごとや利用者の属性により、活動できる施設が決まっており、それぞれ別々に機能してきました。今回の再開発で高層化・複合化し、各機能が1か所にまとまり、柔軟に可変的に有機的に機能できる場所を目指しています。
また、区が一方的にサービスを提供する場ではなく、区民が主体性を持って、自由に活動・活躍できる場として、交流やつながりを支援していくことも狙いの一つです。
区民センターを持続可能な施設として今後も機能させていくには財政負担軽減も重要な要素の一つ。目黒区では「PFI方式(官民が協同して効率的かつ効果的に質の高い公共サービス提供を実現するPPPの概念に基づいた手法のひとつ)」という手法を採用し、事業計画を進めています。
また、目黒川沿いに位置していることから防災活動の拠点となるよう、耐震性、水害対策などを踏まえた計画、環境負荷の軽減、ユニバーサルデザインの導入などを踏まえた内容となっています。
区民センター大規模再開発に対する反対運動の焦点は、目黒区美術館の取り壊しと民間事業への事業委託化
今回、大きな反対運動の焦点となっているのが目黒区美術館の取り壊しでしょうか。目黒区美術館について簡単にご紹介していきましょう。
目黒区美術館とは?
1987年、日本設計事務所が設計を担当して開館。本館は天井から自然光が降り注ぐ、地上3階・地下1階建てとなっています。
定期的に企画展が開催されており、ミュージアムショップやカフェを併設。別棟では市民や子どもたちが作品展などで気軽に利用できる区民ギャラリーを併設しています。
目黒区美術館が収蔵しているコレクションも大変貴重。早い時期から子どもたちのためのワークショップ活動を積極的に行ってきました。
目黒区美術館の取り壊しに対する反対運動の流れ
今回、区民センター大規模再開発に対する反対運動が起きている情報を寄せくださったのが、目黒区在住の美術家・版画家の永井雅人さんです。
【目黒区】区内出身・在住の美術家・版画家である永井雅人さんが、台湾・國立台湾美術館主催の国際公募版画コンクール・ビエンナーレROCで国際賞を受賞しました
現在、市民団体「みんなの目黒区を作る会」サポートメンバーとして、反対署名活動や情報発信をされています。
永井さんたちが疑問を投げかけているポイントは以下の通りです。
- 目黒区美術館は文化財として建築物としても全国的な建築賞を受賞するほど、価値ある建造物である
- 公共の美術館でありながら、藤田嗣治や荻須高徳、長谷川潔、草間彌生など名だたる作家の作品を含めた20億円以上の収蔵品があり、多彩な企画展を行ってきた企画力は稀有なものである
- 併設されている区民ギャラリーは区民の発表の場として大いに活用され、アートを通じた交流などとして親しまれてきた
- 築年数は36年ほどで修繕も済み、新耐震性となっておりインフラの不具合もない
- 2023年2月時点で区民約18名が任意で参加した「周辺地区まちづくり準備会」という小会議で経過が説明されているのみ
- 民間事業化・高層複合施設に置き換えてしまうことで目黒区の文化遺産の損失になるのではないか
- 「いまあるものを活かす」SDGsという観点からも疑問がある
- PFI事業によるデメリット(金利の高いリースの割賦払いと変わらないケースも見受けられ、事業や運営やコントロールが上手くいっていないこともある)
目黒区美術館の解体に対しては、アーティストや日本建築家協会、美術評論家、学者、一般の方々、外国人の方々などから疑問を投げかける声や反対の声が上がっているといいます。
永井雅人さんご自身、目黒区美術館で行われている子どものためのワークショップに参加されたことも。区民ギャラリーは入場無料でアートを身近に、気軽に楽しめる大変貴重な場となっています。
再開発で建物が無くなり、外部事業者へ委託されてしまえば、このような機会は失われてしまうことを懸念。
「2024年10月13日に放送されたNHK“日曜美術館”で出演されたベルリン在住・国際的に活躍されている塩田千春さんが、まだ美大の大学院生だった時に一番最初に呼ばれて参加した1996年の企画展が目黒区美術館でした。
未知の学生だった才能に最初に機会を与えた功績は凄いものなのではないでしょうか。この様な意味のある有意義な場所を失ってはいけないと思います。」と永井さん。
今回の大規模開発の内容や経緯、今後の計画などについてまだ区民に知られていない、議論がされつくされていない面があることも事実。2024年11月17日(日)の13時からBS-TBSの情報報道番組「噂の東京マガジン・噂の現場」で特集放送が予定されています。
ティーバによる登録無しでの1週間の無料配信もありますので「知らなかった」という方はぜひご視聴されてはいかがでしょうか。
永井雅人さん、情報提供ありがとうございました。
↓「目黒区民センター」の場所はこちらになります
↓目黒区美術館の場所はこちらになります