【目黒区】「第8回朗読タイムレスストーリーシリーズ」が11月8日(土)に日本近代文学館で開催。高見順・太宰治・宮沢賢治作品が楽しめます

日本近代文学館(2025年7月撮影)
駒場公園内にある「日本近代文学館」で行われる朗読会のお知らせです。日本近代文学名作選をオーディオブックで届けている「ROUDOKU.TALKER.JP」主催による、第8回の朗読公演「朗読タイムレスストーリーシリーズ」を2025年11月8日(土)に開催します。
「朗読タイムレスストーリーシリーズ」は、明治・大正・昭和に生まれた小説や随筆を、声を通して現代によみがえらせる朗読公演。これまで太宰治『走れメロス』、中島敦『山月記』、森鴎外『最後の一句』、小泉八雲『雪女』などの作品を日本近代文学館で上演してきました。

(画像提供:ROUDOKU.TALKER.JP)
私自身、7月に開催された「第7回朗読タイムレスストーリーシリーズ」に足を運び、「耳で楽しむ名作の世界」にすっかり魅せられてしまいました。
朗読が紡ぎだす物語世界の楽しさを、より多くの方にぜひ知っていただきたいと思います。
第8回目の朗読会で上演される作品、高見順・太宰治・宮沢賢治について
高見順は福井県出身の小説家・詩人です。昭和初頭、大学在学中にプロレタリア文学運動に参加して『大学左派』などに小説や評論を発表しましたが、1933年(昭和8年)に検挙。
その後、時代の苦悩を饒舌体で綴った「故旧忘れ得べき」が第1回芥川賞候補となり、文壇にデビューしました。戦後は『昭和文学盛衰史』などを発表した他、日本ペンクラブの活動や日本近代文学館の創設にも尽くした人物です(引用元:国立国会図書館ホームページより)。
今回の朗読会では『草のいのちを』という作品を取り上げます。
太宰治は青森県出身の文学者。1935年(昭和10年」に発表した『逆行』が芥川賞候補となりました。第二次世界大戦前から戦後にかけて作品を次々に発表。

太宰治と子守タケ像(画像はイメージです)
主な作品に『走れメロス』『津軽』『人間失格』『斜陽」などがあります。今回は『嘘』という作品を朗読。
宮沢賢治は岩手県出身の詩人、童話作家です。農業指導者として農民生活の向上に尽くす傍ら、東北地方の自然や生活を題材に詩や童話を執筆。

宮沢賢治の銅像(画像はイメージです)
1924年(大正13年)に詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を自費出版しました。作品が評価されたのは彼の死後で『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『セロ弾きのゴーシュ』などはご存じの方も多いのではないでしょうか。
今回は朗読されるのは「やまなし」という作品です。
「日本近代文学館」で11月8日(土)開催。「第8回朗読タイムレスストーリーシリーズ」概要

(画像提供:ROUDOKU.TALKER.JP)
「第8回朗読タイムレスストーリーシリーズ」で朗読を担当されるのは俳優の長尾奈奈さんです。

長尾奈奈さん(画像提供:ROUDOKU.TALKER.JP)
仲代達矢主宰の無名塾に二十四期生として入塾。同年『セールスマンの死』で初舞台。以降、舞台、映画と活動の幅を広げています。
主な出演作に、ヴァンニャ・ダルカンタラ監督によるベルギー・フランス・カナダ合作映画『KOKORO』、木村文洋監督による『息衝く』など。
また声の仕事には、佐藤大介監督『狭霧の國』があり、オーディオブック声の書店「日本近代文学名作選」(audiobook.jp)のナレーションも務めています。
今回取り上げられる作品のあらすじをご紹介しましょう。
高見順『草のいのちを』
戦後間もないある日、友人の家を訪ねた「私」は、その弟・清治と出くわす。
特攻隊の生き残りの彼は、生きる気力を失い、自暴自棄になっている。何か言わなくてはならないと思いながら、思わず詩を口ずさみはじめた…。
太宰治『嘘』
津軽の生家に居候していた頃、名誉職についた同級生から聞いた話。
ある大雪の夜、警察署長がやって来て、「絶対に秘密にして置いて下さい。脱走事件です。」と告げた。部隊の営門まで送りとどけたはずの遠縁の男が、入隊していないという。
署長と一緒に彼の家へ出掛けると…。
宮沢賢治『やまなし』
五月、「クラムボンはかぷかぷわらったよ。」と、蟹の兄弟は話している。頭上の魚が鉄砲玉のようなものに攫われ、それが鳥だと知る。
十二月、月を仰ぎ泡の大きさを競っていると、突然、黒く大きなものが、トブンと落ちてきて…。
作品世界の時代背景を理解し、登場人物の心情などにも寄り添い、思いが伝わるように「声」で鮮やかに作品世界を描きだしてくれる長尾奈奈さん。
ドラマティックで臨場感あふれる近代文学の魅力をぜひ、会場で体験してください。
朗読されるのは「日本近代文学館」と関わりの深い作者の作品
実は今回、取り上げられている高見順さんは、「日本近代文学館」立ち上げに大きく貢献された方でもあります。
約15,000人の人から資料の寄贈を受け、川端康成や太宰治、夏目漱石、芥川龍之介、島崎藤村、石川啄木、樋口一葉、有島武郎など、日本近代文学を代表する作家たちの手稿や原稿、図書、雑誌など約120万点を所蔵。
中でも「太宰治文庫」は1987年、1997年、2014年の3回に及ぶご遺族からの資料寄贈があり、原稿・草稿を初めとする計423点に及ぶ資料は、他の追随を許さぬ研究資料の宝庫となっています。
朗読会当日は「日本近代文学館」にて「滅亡を体験するー戦禍と文学」、併設されている川端康成記念室で「川端康成の本」の展覧会も開催。ぜひ合わせて足を運んでみてはいかがでしょうか(別途入館料が必要)。
■情報提供
↓「第8回朗読タイムレスストーリーシリーズ」が開催される「日本近代文学館」の場所はこちらになります。