【目黒区】目黒「ホテル雅叙園東京」を取材!90年以上愛され続けるおもてなしの神髄に迫ります
目黒駅の行人坂を下ると現れる「ホテル雅叙園東京」。古くからの目黒区民なら“目黒雅叙園”という呼び名の方がしっくりくるという方も多いのでは?
今回は目黒のシンボルといっても過言ではない「ホテル雅叙園東京」を取材してきました!前編ではスモールラグジュアリーホテルとしての魅力や客室・レストラン・結婚式場などの施設をダイジェストにご紹介。
後編では、ホテル雅叙園東京と目黒区の歴史、そしてホテルを語る上で外せない東京都指定有形文化財「百段階段」についてじっくりとご紹介していきます。
来年の2022年1月23日(日)開催予定の目黒観光検定にもきっと役立つはず!?豆知識も満載です。
東洋一の美術の殿堂・アートホテルとしての「ホテル雅叙園東京」
ホテル雅叙園東京は1928年(昭和3年)創業。創業者である細川力蔵さんが芝浦の自宅を改築し、料亭を開業したのが始まりです。
当時は本格的な北京料理や日本料理を提供していましたが、目でも楽しんでいただけるよう、館内を一流の芸術家や当代随一の名工たちが装飾。建物の隅々まで贅を尽くしたアート作品として、今もなお色褪せずに輝きを放っています。
日本人が持つ高い美意識と職人たちの芸術的な技術力はまさに圧巻!館内に飾られている家具や芸術作品など、一度訪れただけではそのすべてを味わいつくすことはできません。
料亭・結婚式場からミュージアムホテルへ、「ホテル雅叙園東京」の変遷
料亭としてスタートしたホテル雅叙園東京ですが、日本で初めての総合結婚式場として館内に美容室や写真室、挙式場、披露宴会場などをすべて一か所に備えた場所として注目を集めました。
そして1991年に隣接する目黒川の水害対策拡張工事に伴い大規模なリニューアルを実施。膨大な数の美術品や建物の意匠を移築修復し、当時の面影を上手に残しつつ、美しく蘇らせています。
2017年4月にはホテルとしてリブランド。全60室すべてが80㎡以上の広さを誇るスイートルーム仕様として生まれ変わっています。
現在は世界80カ国の小規模なラグジュアリーホテルだけで構成された「Small Luxury Hotels of the World(SLH)」、世界的なラグジュアリーツーリズム・コンソーシアム「Traveller Made®」に加盟。海外からも注目を集める人気ホテルのひとつとなっています。
「ホテル雅叙園東京」の館内をダイジェストにご紹介!息をのむような豪華さに圧倒されます
ホテルの正面玄関を入るとまず目に飛び込んでくるのがガラス越しに広がる美しい緑の庭園。都内のど真ん中にあるとは思えないような静謐で落ち着いた雰囲気に包まれます。
ホテルの中心部へ誘う回廊には、江戸美人画が描かれた彩色木彫板が飾られています。この彫板は目黒雅叙園時代に“花魁通り”と呼ばれた廊下に飾られていたものを再利用しているそうです。
回廊を進むと、左手に見えてくるコンシェルジュデスク。後に飾られている彫刻のパネルは大規模リニューアル前に、天井の装飾として使われていたものだそうです。
当時は彩色されていたそうですが、シックなブラウン系に塗り直されたことで木目の陰影がより際立ち、奥行きのある緻密な彫刻の技法がより楽しめるようになった気がします。
移動している間もお客様を退屈させない「ホテル雅叙園東京」の演出
そしてホテル雅叙園東京といえばこちらの“招きの大門”。門の上には縁結びを象徴した銅製の飾りが施されています。
回廊には水が流れ、お客様を日常から非日常の世界へと招き入れるかのような演出。一度門をくぐると、時を忘れて楽しみ、帰るのがいやになってしまうかもしれません。
門の両脇には大鳥神社の祭礼で担がれる目黒下一町会の御神輿が4基飾られていました。
目黒区最古といわれる大鳥神社は“目黒のお酉さん”として地元から親しまれている古社。日本武尊を主祭神とし、例年9月に祭礼が行われ、無形文化財・里神楽奉納が行われます。各町内会から御神輿が連合宮入し、たくさんの露店が並ぶ賑やかな秋の風物詩です。
通常はお祭の時にしか目にすることができない御神輿。ホテルで間近に見ることができるのは嬉しい演出です。歴史あるホテルの風景に自然に溶け込んでいますね。
「ホテル雅叙園東京」のメインエリアへ!吹き抜けや渡り廊下など解放感いっぱいのつくり
少し暗めの間接照明が施された招きの大門をくぐりぬけると、そこは別世界が広がっていました!高い天井と大きな開口部。ラウンジやレストラン、カフェなどが集まるホテルのメインエリアです。
色鮮やかなじゅうたんが敷かれた廊下を進むと、ホテル客室へ続く吹き抜けのエリアへ。そこから中庭に出られるようになっています。
四季折々の美しい表情を見せる緑あふれる日本庭園。散策するだけで癒されそうです。
庭内には滝が流れてマイナスイオンいっぱい!実は滝の裏側を見ることができる「胎内めぐり」が可能です。なかなか滝の裏側を見るチャンスはないので、訪れた際はぜひ挑戦してみてくださいね。
「和敬清心」をテーマにつくられた「ホテル雅叙園東京」の客室
ホテル客室のコンセプトである“和敬清心(わけいせいしん)”とは茶道の精神を表す禅語。茶道で、主人と客が互いの心を和らげてつつしみ敬い、茶室の品々や雰囲気を清浄な状態に保つことを意味するそうです。
ホテル雅叙園東京では、和は“和合(互いに楽しもうという心)”、敬は“他を敬愛する心”、清は“清潔・清廉”、心は“ホスピタリティーへの誓い”という意味を込めています。
ホテル客室はお茶室、廊下やエレベーターホールなどを茶庭に見立ててデザイン。そこにはシンプルな中に、自然な姿を求める清らかな美しさのある空間を提供したいという思いが込められているとか。
リビングルームの窓を大きく取り、幅いっぱいにソファを配するなど、外の自然と一体感になれる演出が魅力的。コロナ禍では目黒駅からのアクセスの良さもあり、ここでリモートワークを楽しむビジネスマンやおこもりステイを楽しむ女性もいらっしゃるそうですよ。
絢爛豪華な旧・目黒雅叙園から受け継ぐ美空間と端正な客室のたたずまい。インテリアやアメニティ、リネン類など細部にまでこだわった逸品とおもてなしの心でお客様をお迎えし、送り出す。ホテル雅叙園東京ならではのホスピタリティーが伝わってきます。
客室は6~8階にあり、エグゼクティブ、ジャパニーズ、ジャパニーズモダンなど5タイプ。バスルームにはスチームサウナやジェットバス、日常を忘れて心からくつろげる優雅なひと時を味わえます。
中でも雅叙園スイート「紅葉」は240㎡の広さがあり、ベッドルーム、リビングルーム、ダイニング、サウナを備えたバスルームなど、豪華な邸宅風のお部屋です。
最大26名までのプライベートパーティーも可能で、ご家族でご長寿のお祝いや結婚記念日のパーティなどにおすすめです。
宿泊者には嬉しい美術品を鑑賞できる無料のアクティビティ「雅叙園アートツアー」も実施。普段は入れない百段階段など専任ガイド付きで回ることができますよ。
「ホテル雅叙園東京」の宿泊者だけがアクセスできるエグゼクティブラウンジ
ホテル雅叙園東京には、宿泊者だけが利用できる特別な空間「エグゼクティブラウンジ」が用意されています。現在はコロナ禍ということもあり、営業内容が通常とは異なりますが、朝から夜まで時間により様々なフード&ドリンクサービスを無料で提供。
ホテルチェックインの際は、こちらで専任スタッフによる抹茶のお点前のふるまいも行われていす(2021年10月現在は休止中)。
美食を競い合う「ホテル雅叙園東京」の個性的なレストラン
ホテル雅叙園東京には日本料理や中華料理の他にイタリア料理、グリル料理など多彩なレストランがあります。それぞれをダイジェストにご紹介していきます。
現存する最古といわれる回転テーブルがあるのはココ!中国料理「旬遊紀(しゅんゆうき)」
中国料理「旬遊紀」は、食べることで健康になる「食医同源」を基本理念とするホテル雅叙園東京のメインダイニングです。通常の客席の他、8つの個室があります。
個室の中でも“南風(なんぷう)”は、旧目黒雅叙園から移築・再現されたもので、ジョサイア・コンドル設計の旧岩永邸を移築した特別個室。文化勲章受章者・竪山南風が手掛けた壁画や天井の豪華絢爛な装飾は一見の価値ありです。
また、現存する最古の回転テーブルが備えられているのが“玉城(ぎょくじょう)”。美人画の大家・益田玉城の「美人花笠踊の図」や朱漆塗りの扉・幅木・戸枠などにも注目です。
太宰治の短編小説である『佳日』の中で“目黒の支那料理屋で結婚式が・・・”という描写があり、旧・目黒雅叙園がモデルといわれています。
日本庭園を臨む茅葺一軒家でいただく日本料理「渡風亭(とふうてい)」
小川が流れるアトリウムを進むと見えてくる茅葺屋根一軒家のレストラン日本料理「渡風亭」。日本の伝統美を極めた趣ある8つの個室が点在し、旬の食材を使用した四季折々の美しい会席料理を楽しむことができます。
中でも「桂月(けいげつ)」は広々とした縁側に面した開放的なつくりのお部屋で、美しい庭園を眺めながらゆったりと食事ができる個室。また「竹坡(ちくは)」は、壁・天井に螺鈿細工が施された漆塗り仕上げで、精巧な職人技を堪能できます。
そして「秀畝(しゅうほ)」には天井と欄間に池上秀畝による四季の花と七十七羽の鳥が描かれ、アートを楽しみながらのお食事が楽しめるお部屋。
ランチやディナーに特別な1日を楽しめるレストランとなっています。
披露宴会場にも使われるRISTORANTE“CANOVIANO”
RISTORANTE“CANOVIANO”(画像提供:ホテル雅叙園東京)
日本における自然派イタリア料理の第一人者として知られる植竹隆政さんが腕を振るうRISTORANTE“CANOVIANO”。無駄なものをとことんそぎ落とし、素材の味を引き出すこと、バターなどの動物性油脂を極力使わずにオリーブオイルで仕上げるヘルシーなメニューが好評です。
目で見ても美しく、日本人の味覚に合うアレンジ。絵画のように美しいお料理を選び抜かれたワインとともに楽しめるレストランです。
解放感のあるテラス席の他、セミプライベートルームもあり、結婚式のご家族顔合わせやアニバーサリー食事会にもおすすめ。ウェディングで使われることも多いので、予約必須ですね。
★植竹シェフのセカンドブランド「CANOVIANO CAFE」が誕生しました★
【目黒区】「CANOVIANO CAFE」が「ホテル雅叙園東京」内に9月22日(金)オープン。素材の持ち味を最大限に引き出す、植竹隆政シェフの自然派イタリアンをカジュアルに
ランチブッフェも好評!New American Grill“KANADE TERRACE”
いつもよりもちょっと贅沢したいときに人気のホテルランチブッフェ。New American Grill“KANADE TERRACE”は和・洋両方の約40種類もあるメニューのランチブッフェを楽しめるレストランです。
焼き立てのお肉屋や魚介料理、提携農家から届く新鮮な野菜のグリル、季節のくだものを使ったスイーツなど、ひとつひとつ小分けにして器に盛り付けた料理をセルフサービスでいただけるので安心。
店内は臨場感たっぷりのシェフズテーブル、ダイニングエリア、カジュアルエリア、バーエリアの他、個室もあります。
午後のティータイムには季節のアフタヌーンティーも!ディナータイムはライブ感のあるグリル料理ですが、日本ならではのひと手間加えた美しさも追及した「和を洋で奏でる」スタイルが好評です。
ウェイティングバーは滝と呼応する月をイメージしたアート空間になっています。日本庭園を臨むファイヤープレイスや客席とワインセラーを臨むコミューナルテーブルなど、お食事の前後やナイトカクテルにゆったりとしたひとときを楽しめます。
ペストリー料理長・生野剛哉(しょうの たけや)さんが手掛けるスイーツが絶品PATISSERIE「栞杏(りあん)1928」
New American Grill“KANADE TERRACE”のお隣にあるPATISSERIE「栞杏1928」。店名はフランス語でつなぐ(絆)を意味する“Lien(リアン)”に由来するといいます。
2016年5月よりホテル雅叙園東京ペストリー料理長に就任した生野剛哉さんが手掛けるスイーツは、伝統的でありながらも時代に合った、ホテル雅叙園東京ならではの独創的なものばかりと評判です。
チョコレートや洋菓子だけではなく、ホテルオリジナルのデリカテッセンなどもラインナップ。基本はテイクアウトですが、ティータイムにNew American Grill“KANADE TERRACE”でケーキをいただくことも可能です。
2021年12月16日(木)まで休業中のCafe&Bar「結庵(ゆいあん)」
レストランウェディングによく利用されているCafe&Bar「結庵」。一面ガラス張りで明るい陽射しが差し込むカフェダイニングにはテラスが併設され、ガーデンセレモニーも可能です。
バーカウンターやオープンキッチンも併設。歓送迎会や同窓会、結婚式の二次会などにも人気で、立食パーティにも対応可能です。お料理はフランスの家庭料理をベースにシェフソムリエが厳選したワインを楽しめます。
料亭としての魅力も健在です!23の宴会場を持つ「ホテル雅叙園東京」
会社の周年記念や展示会、結婚披露パーティ、年末年始の宴会など、少人数から大人数まで収容可能な個性的な宴会場を持つホテル雅叙園東京。ビジネス会議やセミナー、研修などに最適な会議室も備えています。
一般的なホール以外にも伝統と格式、歴史を感じるホテル雅叙園東京ならでは宴会場も備えているのが特徴。旧・目黒雅叙園から受け継ぐ、格調高く雅なつくりの小宴会場“牛若”や、客室や廊下を彩ってきた平安時代の美人画を飾った“平安”など、目でも楽しめる宴会場があります。
日本初の総合結婚式場「ホテル雅叙園東京」のウエディング
かつての結婚式は時間に追われる大変な1日でした。美容室でヘアメイクや着付け、写真館で撮影、神社で挙式、その後は料亭へ移動して披露宴などなど。次々と大勢が移動しながら行われる儀式は体力的にも厳しかったことでしょう。
そんな慌ただしい1日を1か所でまとめて行えるようにしたのが旧・目黒雅叙園。今では当たり前のようなサービスですが、当時はとても画期的だったことでした。
出雲大社より御霊をお迎えした神殿で挙げる純和風の神前式、ガーデンチャペル・フォレストチャペル、2つのチャペルで挙げる教会式、大勢の人に見守られながら揚げる人前式の3タイプから選べるウエディングプラン。
美しいミュージアムホテルを舞台に、お2人の新しい門出を祝う多彩なセレモニーが用意されています。
「ホテル雅叙園東京」といえばトイレ!?
実はホテル雅叙園東京で見過ごしてはいけないのがトイレです。場所はNew American Grill“KANADE TERRACE”のすぐお隣。ゴージャスさが大変話題になりました。
入り口からしてすでにトイレの域を超えています!漆芸壁画や木彫腰板の漆芸建具、天井の花鳥画や美人画、そして、せせらぎが流れ、朱塗りの橋がかけられています。
トイレの個室ドアには朱塗りの螺鈿細工模様など、細部まで贅沢なつくり。ホテルを訪れたらぜひ忘れずに利用していきましょう。
駆け足でホテル雅叙園東京をご紹介していきました。次回はいよいよ東京都指定有形文化財「百段階段」へ。目黒の歴史とともに今ではもう同じものは作れないだろうといわれる、芸術家と名工の粋を集めた建築や美術品の数々をご紹介します。
お楽しみに!
■取材協力
ホテル雅叙園東京
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