【目黒区】首都直下地震等による東京被害想定が10年ぶりに見直しに。チーム防災めぐろ「要配慮者目線で考える避難訓練」に参加しての感想をお伝えします
東京都では、東日本大震災を踏まえて策定した「首都直下地震等による東京の被害想定(平成24年公表)」及び「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定(平成25年公表)」を10年ぶりに見直し。
2022年5月25日(水)に「東京都の新たなる被害想定~首都直下地震等による東京の被害想定~」を発表しました。最も大きな被害が出ると想定されている都心南部直下地震が起きた場合、震度6強以上の範囲は区部の約6割との予想も。
皆さんは万が一の時に、どこに避難したらよいのか。どのルートを通るのかをどのぐらい把握していますか?
今回は、2022年5月15日(日)にチーム防災めぐろ主催で行われた「要配慮者目線で考える避難訓練」を取材。実際に中目黒スクエアから中目黒公園までの避難を体験してきました。
【目黒区】配慮が必要な方の避難訓練を実体験してみませんか?チーム防災めぐろ主催で5月15日(日)、中目黒スクエア他で開催
ご年配者や妊婦さん、小さなお子様連れの方、体の不自由な方がご家族にいらした場合、どんな危険や難しさがあるのかできる限りレポートしていきたいと思います。
目黒区在住の有志が集まり、活動している「チーム防災めぐろ」
チーム防災めぐろは、自分たちの街や自分自身、家族を自分たちで守っていこうと考えて活動している防災コミュニティ団体。定期的に集まり、防災に関する「情報」の共有・備蓄、防災意識向上のための情報発信を行っています。
目黒区が「誰ひとり取り残されない町」であることを願い、できることは自分たちでという思いで活動。今回は目黒消防署協力の下、「要配慮者目線で考える避難訓練」を実施しました。
中目黒スクエアに集合、まずは訓練の流れとポイントを説明
集合したのは、中目黒駅から徒歩10分ぐらいのところにある「中目黒スクエア」です。1階・2階には6つの会議室がある「中目黒住区センター」があり、4階~7階は研修・レクリエーション活動などができる「青少年プラザ」などの公共施設が入っている複合ビルです。
今回は2階にある会議室に13時集合。まずはAとBの2つにグループ分けし、「高齢者 疑似体験セット」を使用して避難するパターン、車いすに乗った人を介助しながら避難するパターンを交互に体験することになりました。
避難するのは中目黒公園です。中目黒スクエアを出て、目黒川沿いを移動し、橋を渡って公園まで移動するという流れです。私はAチームで、車いす介助訓練を最初に体験することになりました。
消防署の方から「高齢者 疑似体験セット」の説明を受け、Bチームのメンバーが実際に装着してみる
「高齢者 疑似体験セット」とは、拘束具や重り、視野が狭くなるゴーグル、聞こえにくくするヘッドホン、背中を真っすぐ伸ばせないようにするベルトなどを装着し、老化による身体的変化や心理的変化を疑似体験できるというもの。
今回は消防署の方で2セット用意してくださったので、まずはBチームからこの疑似体験セットを装着し、中目黒公園まで避難することになりました。
手かせ、足かせがつけられ、あっという間に動きが不自由になっていくお2人。
白内障や緑内障のように視野が狭まり、良く見えなくなるゴーグルは、私も実際に装着してみましたが、ともかく不安感が募ります。段差や道路の境目などもほとんどわからずに自分が向かっている方向さえよくわからなくなりました。
また、ヘッドホンをつけることで外の音や話し声なども聞こえにくく、かなり孤独な気持ちになります。これは実際に体験してみないとわからないなと感じました。
Aチームは車いすの介助者がいる想定で中目黒公園まで避難します
車いすにメンバーを乗せて出発。車いすに乗る人、押す人は交替で体験することに。消防署の方が1名付き添ってくださり、誘導の仕方や注意ポイントなどを随時解説してくれました。
目の不自由な方を誘導する点字ブロック。実はこれが曲者で、押している側は特に何も感じないのですが、乗っている側はかなり衝撃を受けています。
ほんの少しの段差でもかなりガタガタと揺れるので、ゆっくりと丁寧に押すのが大切。車いすに乗ったことがないとわからない体験でした。
中目黒公園に向かう橋や遊歩道、坂道になっている場所の押し方、方向転換などきめ細かく解説していただきました。実際の避難では、植え込みの木が倒れたり、障害物があったりなど、一筋縄ではいかないだろうと想像します。
訓練中も車が往来しますし、自転車が脇を高速で走り抜けたりと油断できませんでした。
一番難しかったのは、車いすを抱えて階段を上る訓練
公園内に入る際にスロープではなく階段のある所に移動。車いすの介助者がいて、階段のあるところを移動しなければならないという想定で訓練を行いました。
まずは車いすに人が乗った状態で、お互いに声を掛け合わず、自分のタイミングで持ち上げてみました。車いすが傾き、非常に危険です。そして男性2人でも支えるのが大変なことがわかりました。
実際に階段を上る際は、車いすに人は乗せず、3名で慎重に抱えながら進みます。車いすに人が乗っていない状態でも、水平をキープしながら階段を上るのはとても難しいことを身をもって知りました。
中目黒公園に到着、AチームとBチームで体験をチェンジ
Aチームと中目黒公園で合流。高齢者 疑似体験セットを今度はBチームが体験します。私は撮影の関係上、公園内で休憩中にこの疑似体験セットを装着し、歩いてみました。
ゴーグルを装着するとピンホールから世界を見ているかのよう。色もオレンジ色にぼやけ、地面や植え込みのレンガの区別もつきません。歩いたのはほんの数メートルですが、とても疲れました。
これに重りや拘束具がつけられた状態となるとかなりの厳しさだと思います。
消防署の方が巧みに誘導し、二人ともおぼつかない足取りで階段を下りていきます。実はこの誘導の声掛け、意外に難しいんです。
相手は見えていないので、具体的にどんな危険があるか、どのように回避したらよいか、すべてことばで分かりやすく伝えなければいけません。階段なら残り何段、踊り場があります、左に曲がりますなどなど。
ちょっと説明を間違えると、壁に突進したり、方向を見失ってしまったり。人はいかに視覚に頼っているのかを痛感しました。
「要配慮者目線で考える避難訓練」を終えての感想、街には普段から危険がいっぱい!
実際に中目黒スクエアから中目黒公園までは歩いてわずか数分という距離。しかし、その間にさまざまな障害があることに気づきました。
- スピードを出して縦横無尽に走る自転車(歩道を右側通行したり、急に曲がったりなど)
- 公園入口にある車止め(車いすが通れない)
- 生い茂る木の枝(疑似体験キットをつけていると上にある障害物に気が付かない)
- 切れ目のないガードレール(大まわりしないと道路が渡れない)
などなど。災害時でなくても、高齢者や体の不自由な人にとって実に歩きにくい街になっていることに気が付きました。
妊娠中はお腹が邪魔して足元が全然見えないので、災害時の避難はとても苦労するはずです。赤ちゃんを抱えている場合も同様だと思います。
「高齢者 疑似体験キット」を装着しての感想、点字ブロックや前に人がいる安心感を体感
視野が制限された状態で歩いてみると、点字ブロックの存在のありがたさが身に染みたそうです。体験された方から、安全に歩く道しるべとしてとても役立ったとの意見がありました。
点字ブロックの上を自転車でふさいだりしないように心がけたいものですね。
また、並走してもらうよりも、自分の前を歩きながら誘導してくれた方が安心感があったそうです。誘導が難しくはなりますが、いざというときのために覚えておきたいポイントでした。
助け合うこと、声掛けの大切さを痛感
もし災害で避難している時に、高齢者の方や妊婦さん、車いすを利用している方を見かけた場合は何ができるのでしょうか?
自分で逃げるのが精いっぱい。体力もないので、車いすを持ち上げるなどとても無理と思うかもしれません。
でも、荷物を代わりに持ってあげる。上に伸びた枝を当たらないように押さえてあげる。声掛けして不安感をやわらげてあげるなど、実際はいろいろな手助けができる場面があります。
以前、渋谷にあるマークシティの昇りエスカレーターで尻餅をついてしまった体の大きな男性がいました。そのエスカレーターは1人しか乗れない幅で、尻餅をついたのは登りきったところ。
男性がエスカレーターの降り口をふさいでいる状態なのでそのままでは、後から昇って来た人たちがエスカレーターから転げ落ちてしまいます。
ほんの一瞬の出来事でしたが、私を含めそこに居合わせた人たちが一斉に男性に駆け寄り、助け起こして事なきを得ました。
特に声を掛け合ったわけでもないのに、息ぴったりで行動できたのがちょっと感動的。災害が起きたときに、こんな風にチームプレイや連携で助け合うことができたらいいなと感じたエピソードです。
地震や災害に備えるのは、防災グッズを用意しておくことだけではない
普段、町内会の防災訓練に参加しているという方でも、自宅から避難所まで実際に歩いて確かめてみたという方は少ないようです。
また、災害時はどのように変化するのかを想像しながら歩くこともないですよね。今回訓練に参加したメンバーからも、「実際に体験するのは重要」という声があがりました。
防災グッズを入れたリュックを用意するだけではなく、背負って逃げられるか(重くて背負えなくなっていないか)確かめておく。阪神淡路大震災の体験者からは、夜寝る前に眼鏡はケースに入れ、スリッパとセットで枕元に準備しておくべし、というアドバイスがありました。
目が見えないと本当に身動きがとれません。
また、ペットを飼っていらっしゃる場合、災害時にどのように連れて逃げるのか考えておくのは重要なこと。
福島の実家で飼っていた猫は、先日の福島沖地震の際に驚いて家から脱走。サッシが落ちてガラスが割れたため、そこから外へ逃げ出し3日間戻ってきませんでした。
人間だけではなく、こういったペットへの対策も考えておかなければなりません。
チーム防災めぐろで「要配慮者目線で考える避難訓練」を実施していた同じ日に、2年ぶりとなる「目黒区水防訓練」が午前中行われていました。目黒川の越水を想定して毎年行われているものです。
実は目黒区、震度7までの地震を体験できる「起震車」も持っています。
区ではさまざまな防災に関する訓練や体験ができる機会を提供。町内会や自治会、学校などでこういった訓練に参加するのも大切なことですね。
チーム防災めぐろでは今後も防災に役立つ企画を実施していくとのこと。どなたでも気軽に参加できますので、ぜひFacebookをフォローしてこまめに情報をチェックしてくださいね。
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