【目黒区】毎年恒例・ホテル雅叙園東京「和のあかり×百段階段2022~光と影・百物語~」、美しく幻想的なひとときに包まれる夏
ホテル雅叙園東京の夏といえば「和のあかり×百段階段」。毎年、東京都指定有形文化財「百段階段」を舞台に繰り広げられる夏の風物詩です。
こちらのイベントは2015年からスタートし、2022年で7回目(1回だけお休み)を迎えます。
展示テーマは「光と影・百物語」で、光(あかり)によって生まれる影、異なるふたつの要素が織りなすコントラストが楽しめる内容になっています。
特に今回注目は百物語という怪談を絡めたストーリ仕立てになっているところ。各部屋を巡りながら、黄昏時から夜、そして明け方へと時系列を追いながら怪しく幻想的な世界観が繰り広げられています。
「百物語」は100本のろうそくを囲んで怪談を語り合い、1つ話終えるごとに1本のろうそくを吹き消していくというのがスタイル。最後の1本のろうそくを吹き消すと怪異が現れる(妖怪・青行燈が出てくる)といわれています。
通常は100話語ることはタブーとされ、必ず99話で辞めなければならないそうです。
実際は99段までしかない「百段階段」と、99話まで語られる「百物語の怪談」とを引っ掛けている、というところも粋な演出。2022年の見どころをダイジェストにお伝えしていきます。
はじまりはワクワクするようなお祭りのシーンと、涼やかな風鈴の音色から
ホテルのエレベーターを降り、東京都指定有形文化財「百段階段」へと向かう入口に飾られているのが山口県柳井市の「柳井金魚ちょうちん祭り」。柳井の民芸品である「金魚ちょうちん」をモチーフにした、夏の一大イベントです。
実際のお祭り会場では、約4,000個の金魚ちょうちんが飾られ、そのうち約2,500個に灯りがともり、華やかな雰囲気に包まれます。愛嬌のあるちょうちんからは、祭囃子や子どもたちの賑やかな歓声が聞こえてきそうです。
さらにプロムナードには涼やかな音色を響かせる風鈴がずらり!古来、風鈴の音色は邪気を払い、音の聞こえる範囲には、悪いものが寄り付かないと信じられてきました。
これから始まる百物語の前に、まずは厄祓いとお清めを、という演出です。
一番手前から江戸川区にある篠原風鈴本舗「江戸風鈴」、小田原市にある柏木美術鋳物研究所「小田原風鈴」、富山県高岡市にある能作「鋳物・真鍮風鈴」を展示。夕暮れ時の涼やかな風を運んできます。
ちなみに「江戸風鈴」を名乗れる工房は現在、「篠原風鈴本舗」と「篠原まるよし風鈴」の2か所のみ。
篠原風鈴本舗の二代目を継いだ篠原儀治さんが、昭和39~40年頃に「江戸風鈴」と名付け、商標登録しました。つまり「江戸風鈴」は儀治さんのブランド名であり、その技術を守り、いまも東京で製造し続けている篠原風鈴本舗と、のれん分けした篠原まるよし風鈴だけが「江戸風鈴」の正統な継承者というわけです。
以前、篠原風鈴本舗を取材したことがありますが、江戸風鈴の特徴は以下の3つとなります。
●ガラス製の風鈴で、型を使わない宙吹きで成形する
●風鈴のふちをわざとギザギザに仕上げ、音の響きをよくする
●風鈴の内側から絵付けすることで雨風ではがれにくく、絵が長持ちする
現在、篠原風鈴本舗を継いだ篠原儀治さんの孫である由香利さん(四代目)は「東京の街並みを切り絵風に表現した”TOKYO”」で、2011年に東京都の伝統的工芸品チャレンジ大賞の奨励賞を受賞。その後、円谷プロと組んだウルトラマンシリーズや手塚治虫プロと組んだヒョウタンツギ風鈴など話題作を次々発表しています。
「和のあかり×百段階段」の展示の中で、随所に由香里さんの作品が隠れていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
怪しげな影がうごめく「十畝(じっぽ)の間・薄暮(はくぼ)のあかり」
照明作家 ・ 弦間康仁さんとかんざし作家・榮さんのコラボレーションで彩られているのが「十畝の間」。
榮さんは樹脂とワイヤー(ディップアートを応用したもの)を使った技法で、優美なデザインの花や蝶のかんざし・髪飾りを作っていらっしゃいます。今回「和のあかり×百段階段」への出店は6回目とのこと。
「十畝の間」に描かれている天井画「四季の花鳥図」に合わせ、床の間に四季の花かんざしを展示しています。
そして、照明作家・弦間康仁(げんまやすひと)さんが創り上げた夜の入口をイメージしたディスプレイ。薄暮の森で感じた怪しげな気配と、会場中央にあるたいまつが照らし出すどこかおどろおどろしい世界が不安感をかきたてます。
たいまつの灯りが生み出す影に目を凝らしてみましょう。榮さんの作品である蝶のかんざしが蜘蛛の巣にとらわれている影がくっきりと立ち昇ってきます。
お部屋全体の演出や榮さんの美しいかんざしはもちろん、天袋や床の間などお部屋のあちこちには、弦間さんの“遊び心”が隠されていますので、ぜひお見逃しなく。
放置竹林が幽玄なアートに変身!「漁樵(ぎょしょう)の間」の竹あかり
ひときわ華やかな装飾に彩られた「漁樵(ぎょしょう)の間」では、静岡県にある株式会社 大測(だいそく)が取り組む“アカリノワ(環・和・輪)”による、美しい竹のアートが出迎えてくれます。
“アカリノワ”は代表・大村大輔さんが、故郷の静岡市葵区に放置され、荒廃する竹林を目の当たりにし、なんとか解消できないかと始めた活動。伐採した竹を地域資源として有効活用することで、豊かな自然環境を未来へと繋いでいく取り組みを行っています。
竹あかりはその取り組みの一つであり、飾られた竹灯籠は竹チップにして道路を舗装する、炭にして土壌改良に活用する、竹紙にするなど無駄にしない&ゴミにしない、循環型のアートを心がけているといいます。
本業である測量技術を応用した緩和曲線・数列を用いて作られる模様は、幻想的で美しく夢心地に。妖の世界へかどわかされていくような気分を味わえました。
「草丘(そうきゅう)の間」には仕掛けがいっぱい!情念のあかり
「草丘の間」では、松竹衣裳 ・ 歌舞伎座舞台が手がける「恋の情念」をモチーフとした“創造的なあかり”が楽しめます。
落語や歌舞伎の演目でおなじみ、亡霊と人間が織りなす怪しくも悲しいストーリー“牡丹灯籠”や、嫉妬心のあまりに生霊となる六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)が登場する“源氏物語”、拙い恋心が悲劇をもたらす“八百屋・お七”の物語をテーマに繰り広げられる演出が施されているお部屋です。
ホテル雅叙園東京の入口に「お七の井戸」が残されているのをご存じな方も多いのでは?
天和の大火で焼け出され、避難した檀家の寺で小姓の吉三郎と恋仲になったお七。もう一度火事になれば吉三郎に会えると自分の家に付け火をし、鈴ヶ森で火刑に処されました。
事件の後、出家した吉三郎(西連)がお七の菩提を弔うため、身を清めたという井戸跡が「お七の井戸」なのです。
「草丘の間」では井戸を覗き込みながら、スマホで自撮りするのがおすすめ。歌舞伎座舞台株式会社の巧みな演出が光るフォトスポットです。
どの角度がいちばんフォトジェニック(怖い?)か、ぜひいろいろ試してみてくださいね。
「静水(せいすい)の間」では中里繪魯洲(なかざとえろす)さんが手掛ける“さかさまのあかり”
「静水の間」では、独創的な空間アートを手掛ける造形作家・中里繪魯洲(なかざとえろす)さんの作品を展示。
芒の原を背景に、馬頭を戴いた3本の樹が建てられています。馬と人間の立場をさかさまに置き換えて、夜の奥深く、見えることのない世界を表現。
オブジェのそばに立てられた水晶を覗き込むとそこに見えてくるのは?
美しい月あかりに照らし出された妖しくも切ない光景をぜひじっくりと体感してみてください。
「星光の間」へと続く回廊に集う、物の怪たちのひそやかな気配“真夜中のあかり”
「静水の間」と「星光の間」をつなぐ渡り廊下を今回初めて展示スペースとして活用。福岡県八女市で200年以上の歴史を持つちょうちん屋「伊藤権次郎商店」が、百物語の世界を照らし出す“妖怪提灯”の世界を展示しています。
ぼんやりと照らし出される物の怪たちの姿。人々が寝静まった後、この世のものではないモノたちが集い、宴を繰り広げます。
現代のアーティストたちが紡ぎだす妖たちの物語が「星光の間」に集結
「星光の間」では5名のアーティストたちが紡ぎだす妖たちの物語を展示。上の写真は造形作家である小澤康麿さんの作品で「壁抜け猫又」「地中より生まれる」です。
この他にも切り絵作家・松風直美が描く「猫化姑獲鳥」「猫化遊女」、現代美術家/彫刻家の西島雄志さんの作品「白狐(銅線をつないで作った彫刻作品)」、画家・鈴木ひょっとこさんの家電をモチーフにした妖怪や幽霊の絵などを展示。
また、造形作家・細山田匡宏さんは、妖よりも人間の方が怖いというテーマで3作品を展示しています。
今回、展示されている作品には値段が表示されているのが新しい試み。気に入った作品があれば購入できます。ぜひ、チェックしてみてはいかがでしょうか。
「清方(きよかた)の間」では、光と影がつくる世界へ
百物語もいよいよクライマックス!闇にとらわれた世界と、灯りが導き出す世界。緊張と興奮のるつぼを彩る空間が広がっています。
こちらで展示されている作品にも値段がつけられているものがあり、購入可能です。以下、出品者をダイジェストにご紹介します。
- 3DCGを使った最新テクノロジーによる技術により、現実の三次元の構造・機能を抽象化した、内面の美を表現するオオタキヨオさん
- 木材を炭化させた後、磨き上げることで、自然との共存や循環・再生をテーマとした芸術表現を追求する炭化彫刻家・ヒョーゴコーイチさん
- サンドブラスト技法やレーザー加工機を用いたガラスの器とランプをつくる「いろした工房」
- 第一印刷所の長岡花火をモチーフにした商品「かみはなび」
- ニット(編み物)を使ったライティングアイテムを展示する「ThinKniT®(3Dニット照明)」
- 組子細工を使った灯りを展示する「山川建具」
そして、百物語の九十九話目を飾る、青行燈の幽霊を墨で描いたのは日本画家・園田美穂子さんです。
こちら、スマホで撮影するとちゃんと顔認証されます!
妖しくも儚い幽霊の姿を渾身の筆で描き出した繊細かつ、鬼気迫る作品です。
「百物語」の最後は「頂上の間」へ、ここで待っているのは?
百物語を終えて向かうのは「頂上の間」。こちらでは「朝のあかり 風翔ル、夏・薫ル」をテーマとした展示を楽しむことができます。
伝統様式である「生花(せいか)」と、植物の魅力を造形的に表現する「現代華(げんだいか)」を柱としている「古流かたばみ会」。
その次期家元として、従来の価値観にとらわれない作風が魅力の若手華道家・大塚理航さんが作り出す世界は、ダイナミックで躍動感のある花・植物のエネルギーを感じさせます。
そして現代美術家/絵画、インスタレーションである石井七歩さんの作品は「血の花の血」。
石井さんは「増殖」を構成要素として、視覚的な作品を制作。宇宙のフラクタルな大規模構造と、人々が普段体験する都市や社会との融合をテーマとした作品が特徴的です。
朝の光をイメージした作品は美しくもあり、どこか現実味のないあいまいな世界でもあり・・・。
果たして私たちは無事、現実世界へ戻ってこれたのでしょうか。それとも?
音でも感じる「百物語」の世界
今回の「和のあかり×百段階段2022」では、昨年に引き続き音楽家のヨダタケシさんがBGMを担当。ヨダさんはテルミンを操る音楽家であり、女神の歌声と評される独特なサウンドで、ファンタジックな世界を生み出しています。
各部屋の展示テーマに合わせてオリジナル楽曲を提供。ゲストヴォーカリストとして、前回同様舞台俳優・ダンサーである片山千穂さんを迎えて美しくも妖しい、幻想的な世界観を見事に表現していました。
百物語の世界へいざない、導くオリジナルサウンドトラックはミュージアムショップでも購入可。ぜひ、展示会を見終わった後は忘れずに足を運んでみてくださいね。
【開催期間】2022年7月2日(土)~9月25日(日)、11時30分~18時(最終入館17時30分)
※8月20日(土)は17時まで(最終入館16時30分)
【開催会場】ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
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「ホテル雅叙園東京」の「結庵」が、8月31日まで夏季限定営業しています。展示会を楽しんだ後は、ぜひこちらで冷たいかき氷やビールを1杯、いかがですか?
【目黒区】ホテル雅叙園東京のCafe&Bar「結庵(ゆいあん)」が期間限定オープン、シェイブアイスと冷えたビールで蒸し暑い夏を乗り切る!
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