【目黒区】区立第一中学校で開催されたリアル参加型「めぐろ防災フェスタ」を取材、関東大震災から100年の節目に改めて“防災”について考える
9月1日の「防災の日」にちなみ、2023年9月2日(土)・3日(日)の2日間にわたり開催された目黒区の防災訓練。
【目黒区】9月の「目黒区総合防災訓練」は自宅で参加できる「目黒区オンライン防災訓練」、リアル参加型「めぐろ防災フェスタ」の2本立て!楽しく学びながら防災力アップ
前編では9月2日(土)に実施された「オンライン防災訓練」の様子をレポートしました。
後編では9月3日(日)、区立第一中学校で実施されたリアル参加型の「めぐろ防災フェスタ」に足を運び、取材してきましたので当日の様子をできる限りお伝えしたいと思います。
会場となった区立第一中学校にはすでに大勢の参加者がいっぱい!
「めぐろ防災フェスタ」スタート10時前に開場に到着しましたが、すでにたくさんの方が来場されていました。前回の「めぐろ水防フェスタ」もそうでしたが、参加型・体験型のイベント形式にして、より多くの方の興味・関心を集めているようです。
【目黒区】中目黒公園で開催された「めぐろ水防フェスタ」を突撃取材!楽しみながら風水害への備えが学べる参加型・体験型のイベントで大盛況
実際に見て・触れて・実践することで、防災に対する知識や経験を積むことができるフェスタ形式。前回取材してみて感じましたが、いざというときに役に立つ「防災力・自助力」アップにつながる内容だと思いました。
それではさっそく、当日の様子をダイジェストでご紹介しましょう。
地震で怖いのは実は「火事」、まずは消化器の使い方から学ぼう!
自宅や職場に消火器を置いてあるところは多いと思いますが、実際に使ってみたという方は少ないのでは?
消防士の方から使い方を教えていただきながら、プールに向かって消火のデモンストレーションをしました。
まず最初に大きな声で周囲の人に「火事だ」と火災を知らせ、消火器を火災場所まで運びます。次に安全栓(ピン)を上に引き抜き、ホースの先端のノズルをしっかりと持つこと。
火元に向けてレバーを強く握ると消火剤が出てきます。
実は9月2日(土)の「オンライン防災訓練」で、消火器の使い方がクイズになっていました。問題は以下の3問。
2.燃えている場所のどの辺を狙う?
3.何秒ぐらい消火剤は噴出される?
1.の答えは3~5m離れて、2.は火元を狙う、3.は粉末消火器で15秒程度が答えでした。私は「2.の火元を狙う」しか正解できませんでした・・・。普通の消火器って意外に消火できる時間が短いんですね。
屋外では風向きにも注意し、風上から消火するのがポイントだそうです。
最も関心が高かったのは自衛隊炊き出しカレー!?わずか20分程度で整理券配布終了
今回の「めぐろ防災フェスタ」で最も長い行列ができていたのは、陸上自衛隊第一普通科連隊・駒場町会・氷川台町会の皆さんによる“カレーの炊き出し”。被災者の方々が食べている“炊き出し”とはどんなものなのか、私も興味があります。
10時30分から整理券配布がスタート。先着400名分が用意されていました。
カレーに使われた具材は目黒区と災害協定を締結している「東急ストア」からの提供。お米は区で備蓄しているアルファ化米を使用していました。
私が並んだ時点で「残り100食分です!」とのアナウンスが・・・。諦めかけていたのですがなんとか整理券を無事ゲットできました。
災害食を実際に試食してみよう!気に入った食品はその場で購入もできました
もう一つ、長い行列ができていたのが「災害食コンテスト&試食販売」のコーナー。災害食を備蓄しているご家庭は多いと思いますが、実際に食べてみてどんな味なのか買う前に試せるというのはレアな体験。
1つ目は「そのまんまOKカレー」で甘口・中辛があります。温める必要はなく、ご飯も不要。
米粒状にしたでんぷんがごはんの代わりに入っており、食感はほぼご飯のようでした。中辛を試食しましたがとてもスパイシーでいい香り。おいしいです。
買って帰りたかったのですが、こちらは試食のみでした。残念。
2つ目は6年間保存できる栄養機能食品「スーパーバランス」です。少し固めのパンのような食感でチョコチップ味とココア味を試食。
全粒粉を使っているため、口の中の水分が持っていかれます。水などと一緒にいただくといいそうです。
こちらのブースでは試食した「スーパーバランス」ではなく、「だしがゆ~リゾット風~」と「もち六年」を購入して帰りました。
続いて試食したのが5年間保存できる「揖保乃糸防災食」。こちらめちゃめちゃおいしいです!
買って帰りたかったのですが、荷物になるので断念。必ず探して購入したいと思いました。
続いて試食したのが「ライフスープ」。粉末タイプのスープで水・お湯どちらでも溶かして飲めます。
味は優しい野菜コンソメ味。1食分で豊富な栄養をバランスよく摂れるすぐれものでした。
食物アレルギー特定原材料も使用していないので、ご家族でアレルギーをお持ちの方がいる場合に助かりますね。
最後はスパーク株式会社の「5年保存水(災害備蓄用)」です。
どのご家庭でも水の備蓄は大きな課題。スペースをとることと、賞味期限をチェックしながら常に入れ替えていかねばならないので、結構面倒に感じる方も多いのでは?
こちらのお水は大分県宇佐市の天然水で、RO膜(逆浸透膜濾過)で極限まで濾過したもの。5年間の長期保存が可能だそうです。
レンタルサーバーや宅配も行っているとのこと。オフィスなどで普段の飲料水として活用しつつストックしておくと安心ですね。
レアな車両がずらり!子どもたちは制服を着て記念撮影も楽しめました
ご家族連れが多く集まっていたのはやっぱり車両展示のコーナー。目黒消防署・目黒消防団による防火衣試着体験では、小さな消防士さんが誕生していました。
「めぐろ水防フェスタ」でも大人気だったはしご車は、事前抽選で当選された方のみの体験。想像以上に高くまではしごがあがっていくのを見て、尻込みしてしまうお子さんもいらっしゃいました。
パトカーや白バイは大人の方にも人気。皆さん興味深そうに中をのぞいていました。
警察官に変身できるコーナーもあります。
普段めったに目にすることがない自衛隊の「82式指揮通信車」。実際に中に入って外を見ることもできるので人気でした。
自衛隊東京地方協力本部のマスコット「トウチ」くんとの触れ合いや記念撮影も!
この他、自衛隊のブースでは身近なもので担架を作る「応急担架体験」「ロープ結索法」について紹介。
手動掘削機によるブロック破壊体験コーナーもありました。
煙に巻かれる体験、地震の揺れを体感できる起震車で地震や火事の恐ろしさを実感
火事が起きた場合、煙で前がよく見えなくなる状態を体験できる「煙体験ハウス」。訓練とはいえ出口までがどんなに長く感じることか。
普段、視覚に頼っているため、よく見えない恐怖にドキドキします。火事の恐ろしさは炎だけじゃないと痛感できます。
起震車では最大で震度7までの揺れを体験可能。一度体験したいと思いつつもいつも行列ができていて断念しています。
外から見ていても震度6の地震がきたら生きた心地がしないだろうなと感じています。
体育館ではステージイベント、救急救命訓練、折り紙食器作成体験なども
体育館では東京消防庁ストリートダンス同好会の皆さんによるダンスパフォーマンスが行われていました。普段から消防活動で鍛錬されているだけあって、キレキレのダンスです。
体育館の手前のエリアでは「折り紙食器作成体験」「AR・VR災害体験」などを実施。
ゴーグルをつけて、消火活動を実践さながらに体験できる「VR消火訓練シミュレータ」も。
そして私は約20年ぶりとなる「応急救護訓練」を体験させていただきました。
以前、心肺蘇生・AEDを使った応急手当を行う救命講習を受けて「救命技能認定証」をいただいたことがありますが、その後再講習を受けず時は流れ・・・。
手順を忘れていることも多く、定期的に講習を受けて、スキルがさびないようにしておかないとだめだなと反省することしきりです。皆さんもぜひ、「やったことがある」ではなく、講習を受け続けておくことをおすすめします。
この他、各展示ブースを駆け足でご紹介
目黒消防署とトヨタモビリティ東京による「ミニカー体験」。
トヨタモビリティ東京のミニカーは、水素燃料で走るバスをモデルにしたものでした。本物そっくりのラッピングでかわいい!
この他、トヨタモビリティ東京では給電車両による給電デモも行っていました。
そして東京電力パワーグリットでは、地震が起きた際に自動でブレーカーが落ちる「感震ブレーカー」を紹介。
地震が起きた際、スイッチの消し忘れて「通電火災」を起こしてしまわないようブレーカーを落とすことが推奨されています。しかしながら、避難することで精いっぱいな状況かもしれません。
「感震ブレーカー」は想定値以上の揺れを感知した際、ブレーカーやコンセントなどの電気を自動で止める器具です。地震が起きた時に自宅にいるとは限りませんので大変有効な対策ですね。
東京都水道局では応急給水袋の展示・背負い体験、浸水時水圧体験・下水道管調査実演の他、災害時の給水ステーションの紹介なども。
消火栓を活用した応急給水の展示もありました。
東京ガスネットワークではマイコンメーター復旧体験を実施。
NTT東日本による災害用伝言ダイヤル171操作体験。
Yahoo!による防災アプリの紹介と、アプリ利用体験のブースもありました。
この他、目黒区からは「災害廃棄物処理・ペット防災」「避難所資機材取扱体験」「要配慮者支援防災クイズ」などを実施。
どのブースも大盛況でした。
「関東大震災100年特別展」で学んだこと「災害時には被災者も救護者になる」
賑やかな展示ブースを離れて「関東大震災100年特別展」へ。
関東大震災が起きた当時の様子がわかるパネル展示と、「ノブさんからのメッセージ 手記に学ぶ関東大震災」(制作・引用元:公益財団法人東京防災救急協会)の放映が行われていました。
関東大震災が起きた当日、2人の幼子を連れて、必死に命をつないだノブさんが何を見て、どう行動したのかを臨場感あふれる映像で再現。ちょっとした判断ミスが生死を分けるということを痛感しました。
この映像を見て最も心に残ったのは、「災害時には被災者も救護者になる」ということ。「自助」はもちろんのこと、「共助」の温かさ・大切さが伝わってくる内容です。
YouTubeで公開されていますので、ぜひ皆さん一度ご覧になってくださいね。
「関東大震災100年特別展」を見た後、ちょうど自衛隊カレーを提供していただける時間になりました。
特別なものではなく、家庭で家人が作ってくれるようなごく普通のカレーです。アルファ化米はやや固めの炊きあがりですが、カレーにはぴったり。
もし、被災して何日も温かい食事が取れずにいたら、どれほどこの一皿のカレーに心を癒されることでしょうか。このカレーの味が被災者の心に「当たり前の日常」の幸せを、思い起こさせてくれるに違いありません。
大きな災害が起きるたび、被災者の方々の救護に全力で当たる自衛隊の方々。その優しさが伝わってくるようなおいしさでした。
最後に青木英二区長へのインタビュー、災害に対して心がけてほしいこととは
「めぐろ防災フェスタ」に来場されていた目黒区長・青木英二さんに直接お話を伺うことができたので、最後にご紹介したいと思います。
まずはフェスタ形式で開催されてからの反響についてはいかがでしょうか。
「大変多くの方から関心を寄せていただき、熱心に取り組んでいらっしゃる区民の方が多いということを実感しました。
目黒区は南北に長い区で意外に移動が大変なのですが、本日も遠くから足を運んでくださっている方をお見掛けしています。
目黒区は比較的人口密度が高いエリアですから、災害が起きた場合、公助だけではどうしても支援が行き届きません。ご自身で身を守る“自助”、ご家族や地域の方が連携してチームワークを発揮する“共助”について関心や理解を高めていただく1日となれば幸いです」
また、2022年5月に発表された東京都の首都直下地震が起きた場合の被害想定を見て、気を引き締めなければならないと痛感したそうです。
ここ数年、目黒区内では耐震性に問題がある建物の建て替えや再開発などを進めてきました。しかしながら、まだ木造建築の建物が密集しているエリアも。
地震の際、もっとも被害を大きくするのが火事です。
いざというときに緊急車両が通行できるように道路の拡張、建物の不燃化を意識しつつさらなる整備を進めたいとおっしゃっていました。
目黒区で災害が起きた場合、私たちはどのような点に気を付けて行動したらいいでしょうか。
「目黒区内には多くの会社があり、区外から通勤してこられる方もいらっしゃいます。東日本大震災の時も電車が動かなくなり、多くの帰宅困難者が発生しました。
東京都の被害想定では目黒区内だけで約6万人の帰宅困難者が出るとの予測も。
まずは無理に帰宅なさらず、各会社で待機いただくことをお願いしたいです。そのためにも職場で、いざというときに避難生活が送れるだけの備蓄をしていただくことが重要。
また、道を歩いていて被災する場合もありますので、日頃から一時的に避難できる場所をあらかじめ知っておくのも大切なことだと思います。
それから持病をお持ちの方は薬を持ち歩くこともぜひ心がけてください」
災害は予想を超えた規模で突然やってきます。地震だけではなく、台風や火事など様々な要因で甚大化することも。
今後も気を引き締めて、その時に備えるようにしたいものですね。
■取材協力
↓会場となった「目黒区立第一中学校」の場所はこちらになります。