【目黒区】めぐろ観光まちづくり協会主催の「現代彫刻美術館や目黒消防署を巡るまち歩き」ツアー。はしご車乗車体験もしてきました

めぐろ観光まちづくり協会が主催するまち歩きツアー、今回は2025年10月30日(木)に開催された「現代彫刻美術館や目黒消防署を巡るまち歩き」に参加してきました。メインガイドを務めてくださったのは、井上裕美子さんです。
めぐろ観光まちづくり協会の事務所がある「中目黒GTタワー前広場」で待ち合わせ。訪れる予定のスポットは「中目黒八幡神社」「鶏足山 實相寺(じっそうじ)」「長泉院付属現代彫刻美術館」「油面地蔵尊」「目黒消防署」で、トータル約3.5㎞、3時間程度の予定です。

万年めぐろボランティアガイド見習いの私が、ツアーの見どころをダイジェストでご紹介していきましょう。
飲料可能な”神泉”が湧き出ている「中目黒八幡神社」

中目黒八幡神社は中目黒駅から徒歩約7分のところにある旧中目黒村の鎮守。主祭神は応神天皇です。
毎年9月に行われる例大祭では、「江戸の里神楽」が奉納されることで知られています。
天照大神を合祀している他、境内には伊勢神宮・皇居・橿原神宮・明治神宮・靖国神社をお詣りできる遥拝所(敬神塔)」や三峯神社も。そちらにもぜひお参りしてみてはいかがでしょうか。
中目黒八幡神社の鳥居をくぐった少し先の右手には”神泉”と書かれた湧き水が…。

かつては湧水が豊富だった目黒ですが、最近は宅地化が進み、水量が少なくなっています。こちらの水は保健所の水質検査を受けているとのことなので、自己責任で一口頂いてみましたが、とてもまろやかでやわらかな口当たり。
皆さんはペットボトルなどに入れて持ち帰り、家で沸かしてから飲んでくださいね。
↓「中目黒八幡神社」の場所はこちらになります。
鍋がころがるほどの急坂だった!?「なべころ坂」

神社から實相寺へ向かう途中、なべころ坂近くを通りました。なべころ坂(別名:なべごろ坂)は、中目黒四丁目13番と14番、16番の間の急坂をいいます。
鍋が転がるほどの急坂であるという説と、赤土が水でやわらかくなった「なべごろ」を示す(目黒の古い方言)という2つの説があるのだとか(参照元:目黒区ホームページより)。
今回歩いた道は「庚申道」と呼ばれ、かつては庚申信仰が盛んだった頃に建てられた庚申塔があちこちに建てられていました。
坂を上り切った辺りにある「なべころ坂緑地公園」の角には「藤の庚申塔」、そして目黒の権之助坂で有名な菅沼権之助さんのお墓もあるそうです。今回は立ち寄らなかったのですが、近いうちにぜひ足を運んでみたいと思います。
なべころ坂の脇には平成の始め頃までガスタンクがあった!?

中目黒大師公邸
なべころ坂の脇、四丁目付近には「アーバンハイツ中目黒」と駐日各国大使の公邸(共同住宅タイプ)がありますが、かつてここはガスタンクが並ぶ東京ガス株式会社の敷地(1927年竣工、平成の始めに再開発)でした。
さらにその前は牧場だった(明治大正期)というから驚きです。斜面の下から水が湧き出ていて湧水池があります。

中目黒南緑地公園の湧水池
跡地の一部は区立公園として湧水池を含めて整備されていました。高低差をそのまま生かした細長い公園を上った先に、次の目的地である長泉院付属現代彫刻美術館と實相寺があります。
↓「中目黒南緑地公園」の場所はこちらになります。
閻魔様の像が有名な天台宗寺院「鶏足山 實相寺」

實相寺は住宅に囲まれたこぢんまりとしたお寺です。もともとは日蓮宗のお寺として港区三田にある魚籃坂下(ぎょらんざかした)開山しましたが、その後天台宗に改めて開基。
区画整理により1911年(明治44年)に現在の中目黒五丁目へ移転したそうです。ご本尊は地蔵菩薩像。
こちらで有名なのが六尺あまり(約180㎝)の閻魔様像です。

(画像提供:めぐろ観光まちづくり協会)
江戸の大半を焼いた明暦の大火(1657年)、俗にいう”振り袖火事”の際にお堂が焼け、閻魔様の頭部のみが奇跡的に焼け残ったのだとか。頭だけ残ったので、頭痛や気病にご利益が有ると崇敬されています(体は後に復元)。
普段は年に2回、1月16日と7月16日だけ開帳されてお参りできるのですが、今回、まち歩きで訪れるということでご住職が特別にご開帳くださいました。
↓「鶏足山 實相寺」の場所はこちらになります。
アートを楽しみながら、目黒の街を一望するロケーションが魅力の「長泉院付属現代彫刻美術館」

高峯山 長泉院
長泉院は浄土宗律院のお寺で江戸時代後期(1761年)の創建。そのお隣にあるのがお寺のご住職、故・渡辺泰裕さんが初代館長を務めた「現代彫刻美術館」です。
ちなみにこの現代彫刻美術館入口脇にも「長泉院庚申塔」が…。

長泉院庚申塔
近くにある馬喰(ばくろ)坂下にある個人宅から掘り出されたものだそうで、駒形正面に「庚申供養塔」、左面に「武州荏原郡中目黒村講中」と彫られているそうです。

20世紀後半以降の日本の彫刻家による作品が屋内外に展示。意匠は初代館長・渡辺泰裕さん、建物の設計は堀響一さんが手掛け、2002年にリニューアル工事が行われています。
屋内展示施設は2階建てで6角形を組み合わせたユニークなデザイン。展示作品の中には2024年に亡くなられた舟越桂さんのものもありました。

野外展示場は4つあり、3と4からは目黒の街を一望できる素晴らしい眺望が楽しめます。入館料は無料でアート作品を楽しめる目黒の穴場スポット。
ぜひお時間のある時に足を運んでみてはいかがでしょうか。
↓「長泉院付属現代彫刻美術館」の場所はこちらになります。
馬喰坂上の庚申塔群ととちの木庚申へ

馬喰坂上の庚申塔群
目黒の馬喰坂は目黒三丁目と中目黒四丁目の堺にある坂で、庚申道に通じる道(なべころ坂と並走するような位置関係)。急な傾斜が風雨にさらされ、大小の穴をあけていたので”ばくろ坂”と呼んだとのこと。
「ばくろ」は風雨にされ穴のあいた状態を表す目黒の古い方言なんだそうです。
馬喰坂上の庚申塔群(永隆寺庚申塔)は坂を上り切ったところに4基あります。上写真向かって一番右から2番目の「板碑型」が1680年と最も古く、三猿のみが彫られていました。

とちの木庚申
続いて立ち寄ったのが目黒四丁目にあるとちの木庚申。名前の由来となったとちの木は残念ながら枯れてしまい、いまは根元だけが残っています。
庚申塔は現在は暗渠になっている谷戸前川で発見されたそうです。
現在はバス停の名前のみにその名を残す「自然園」

東急バスの黒06(目黒駅~三軒茶屋駅)系統に乗ると「自然園下」というバス停があります。降りてもそれらしき施設はなく、「なぜ自然園?」と不思議に思われる方も多いのではないでしょうか。
実はかつて大正時代に農学者で資産家であった岡見彦蔵(おかみひこぞう)さんが造った「自然園」という行楽施設の名残りなのだそうです。
「自然園」があったのは中目黒五丁目12番から20番のあたりで、バス停の南西、谷戸前川(やとまえがわ)の南に三角形に拡がっていました。
イチゴ狩りやヤギ牧場のミルクが評判で、テニスコートや休憩の茶屋なども作られ、当時は東京市郊外の自然と触れ合える施設として、人気を呼んでいたそうです。
1925年(大正14年)頃には閉園になり、いまはバス停の名前にその歴史を語り継いでいます。
油面小学校から「油面子育地蔵尊」へ

油面小学校
中町一丁目にある目黒区立油面小学校。2025年に開校100周年を迎え、「祝油面小学校100周年 あぶらめん住区まつり2025」を開催したり、記念キャラクター「百周の王 アブライオン」が登場し、地元を大いに盛り上げました。

百周の王 アブライオン
「油面」という地名は姿を消してしまいましたが、小学校や油面公園などの名前に残されており、かつての街の成り立ちを忍ばせています。

油面高地蔵尊
油面小学校に通学する子どもたちの安全を見守るように、すぐ近くには「油面高地蔵尊」が…。
最後の訪問地である目黒消防署はもうすぐです。
目黒消防署ではしご車搭乗体験と、屋内に取り残された方を救助する訓練等を見学

まち歩きの最後はいよいよ目黒消防署へおじゃまします。日頃の訓練の様子やはしご車を見学できるということでとても楽しみにしていました。
目黒区の総合防災訓練「めぐろ防災フェスタ」ではしご車乗車体験が行われているのですが、応募できるのはお子さまがいらっしゃる方のみ。しかも人気のコンテンツなので、毎回抽選となっています。
今回特別にまち歩き参加者も乗車体験ができる、ということになったのでワクワクが止まりません。

付き添いの消防士の方とツアー参加者2名、順番に乗せていただくことになりました。はしごの先につけられているカゴに乗り、安全のためにヘルメット、ハーネスを付けていよいよ体験スタートです。

ぐんぐんと空へ向かって伸びていくはしご。消防署の方にうかがったところ、だいたいビルの10階相当の高さなのだそう。少し風がある日だったので上まで行くとゆらゆらとはしごが揺れます…。
遠く林試の森が見え、さらにその奥には武蔵小山駅周辺のタワマンなどを眺望でき、まさに絶景です。足元を見ると震え上がるような高さですが…。
とてもよい経験をさせていただきました。

続いて火災が発生した際、消防服に着替えて現場に向かうためのデモンストレーション。実際に着替えて装備を装着するまで、あっという間でびっくりです。
1分1秒でも早く現場へ駆けつけるため、また、ご自身を守るためにただ着ればよいということではなく、正確に装備できるよう厳しい訓練を日々行っておられるというのを実感しました。

最後は家屋に取り残されてしまった方を背負って救助する訓練を拝見しました。

ベランダに要救助者を発見
2階建ての家のベランダに要救助者を発見して下ろすという流れです。要救助者はホースの素材で作られています。

隊員の方は軽々と背負っておられましたが、50㎏以上あるそうです。体の大きな男性でも背負ってはしごを降りられるよう訓練されているとのこと。
本当に頭が下がります…。まち歩きに参加されていた方から「痩せなきゃ…」という声が漏れてきましたが私もです。
私たちの安全はこういった消防士さんたちの絶え間ない努力の上に守られていると、肌で感じることができる貴重な体験でした。
今回は訓練ということで撮影させていただきましたが、実際は危険な現場で救助・救援にあたっていらっしゃる消防士の方々。火災現場で救援の様子等は、プライバシー保護のためにも撮影してSNSなどに投稿するのは控えてくださるようお願いします。
また、今年は目黒区内で発生する火災が多くなっているとのこと。年末年始にかけて空気が乾燥し、より一層火事が起きやすい状況になりますので気を引き締めていただければと思います。
めぐろ観光まちづくり協会では年に数回、このようなまち歩きを企画しています。目黒区の歴史や知らなかったエピソードなどを知る絶好のチャンス。
皆さんもぜひ、参加してみてくださいね。
■取材協力
↓「目黒消防署」の場所はこちらになります。








